スタリ・グラード (ボスニア・ヘルツェゴビナ)

スタリ・グラード：東西文化が交差するサラエヴォの歴史地区

スタリ・グラード（Stari Grad）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦のサラエヴォ県に属する基礎自治体であり、サラエヴォ市を構成する重要な地区の一つです。その名は「古い街」を意味し、歴史的な魅力と文化的な多様性に富んでいます。

歴史と文化の交差点

スタリ・グラードの中心部には、バシュチャルシヤという15世紀にオスマン帝国によって築かれた歴史的な交易地区があります。この地区は、オスマン帝国の影響を色濃く残し、独特の雰囲気を持っています。一方、スタリ・グラードの西部には、オーストリア＝ハンガリー帝国の建築や文化が息づいており、東西の文化が融合した景観を作り出しています。このコントラストこそが、サラエヴォが東西の帝国の接点であったことを象徴していると言えるでしょう。

宗教的多様性

スタリ・グラードは、宗教的な多様性も特徴の一つです。地区内には、イスラム教のガジ・フスレヴ＝ベグ・モスクやツァール・モスク、カトリック教会のイエスの聖心大聖堂など、様々な宗教施設が共存しています。これらの宗教施設は、スタリ・グラードの歴史と文化を物語る上で欠かせない存在です。

人口構成

スタリ・グラードは、サラエヴォを構成する4つの基礎自治体の中で最も人口が少なく、人口密度も低い傾向にあります。しかし、多くのホテルや観光スポットが集まっているため、観光客にとっては魅力的なエリアとなっています。

1971年と1991年の人口構成を見ると、民族構成の変化が分かります。1971年にはムスリム人が多数を占めていましたが、1991年にはボシュニャク人としての認識が強まりました。また、セルビア人やクロアチア人の割合も減少しています。2005年には、総人口の97%がボシュニャク人と推定されています。

逸話：遺恨の家

スタリ・グラードには、「遺恨の家」（Inat Kuca）と呼ばれるレストランがあります。このレストランは、オーストリア＝ハンガリー帝国時代に、市役所と図書館の建設予定地に建っていた家を、所有者が立ち退きを拒否し続けた末、一片一片移動させてミリャツカ川の対岸に再建したという逸話を持っています。このエピソードは、スタリ・グラードの人々の抵抗精神と故郷への愛着を象徴するものとして語り継がれています。

スタリ・グラードは、その歴史、文化、宗教的な多様性を通じて、サラエヴォの魅力を凝縮した地区と言えるでしょう。訪れる人々は、東西の文化が交錯する独特の雰囲気を体験し、サラエヴォの歴史と文化に触れることができます。

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