スタリ・ラスとソポチャニ

「スタリ・ラスとソポチャニ」は、1979年にユネスコの世界遺産に登録されたセルビアの宝です。この地は、かつてラシュカ地方の中心として栄えたラスの遺跡と、セルビア正教の重要な修道院群を含んでいます。

登録対象

登録対象となっているのは、以下の5つの要素です。

1. スタリ・ラス (Stari Ras, ID96-001)
「古いラス」を意味するスタリ・ラスは、10世紀から13世紀にかけてラシュカ地方の主都として繁栄しました。現在残る遺跡からは、当時の王宮や聖堂の跡を垣間見ることができます。

2. ソポチャニ修道院 (Sopoćani Monastery, ID96-002)
1260年頃にセルビア王ステファン・ウロシュ1世によって建立されたソポチャニ修道院は、セルビア正教の信仰の中心地でした。特に、至聖三者聖堂に残るフレスコ画『生神女の就寝』は、その美しさで知られ、13世紀ビザンティン美術の傑作とされています。

3. 聖ペトル聖堂とネクロポリス (St. Peter's Church & necropolis, ID96-003)
ノヴィ・パザルに残るプレ・ロマネスク様式の聖堂と墓地です。聖堂は6世紀に創建されたと考えられていますが、現存する建物は10世紀頃のものとされています。セルビア最古の聖堂であるだけでなく、バルカン半島でも最古のキリスト教建造物の一つです。聖堂の周辺には、古い墓地が広がっており、歴史の重みを感じさせます。

4. ジュルジェヴィ・ストゥポヴィ修道院 (Monastery of Djurdjevi Stupovi, ID96-004)
「聖ゲオルギの柱」を意味するジュルジェヴィ・ストゥポヴィ修道院は、1168年に創建されました。付属の聖ゲオルギ聖堂は、ロマネスク建築とビザンティン建築が融合した独特の様式をもち、後世の建築に大きな影響を与えました。内部には12世紀から13世紀にかけてのフレスコ画が残されています。

5. グラディナの城壁 (Fortress of Gradina with lower town of Trgovište, ID96-005)
ラスの防衛施設として重要な役割を果たしたグラディナの城壁は、当時の建築様式を今に伝える貴重な遺跡です。トゥルゴヴィシュテの町を守るために築かれ、9世紀に最初の建造が始まり、12世紀に町全体を囲むように拡張されました。

登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作: ソポチャニ修道院のフレスコ画など、中世セルビア美術の傑作群は、人類の創造性を象徴しています。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠: ラスの遺跡群は、中世セルビア王国の政治、文化、宗教の中心地としての歴史を物語る貴重な証拠です。

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