ノヴィ・パザル

ノヴィ・パザル：歴史と文化が交差するセルビアの古都

ノヴィ・パザルは、セルビア南西部のラシュカ郡に位置する都市であり、同名の基礎自治体の中心地です。サンジャク地方の中心として、セルビアにおけるボシュニャク人の文化的な中心地としての役割も担っています。

地名の由来

ノヴィ・パザルの地名は、「新しい市場」を意味するセルビア・クロアチア語に由来します。 "pazar" はトルコ語からの借用で、トルコ語では「イェニ・パザール」（Yeni Pazar）と表記されます。

地理

ノヴィ・パザルは、ヨシャニツァ盆地に位置し、ラシュカ川、デェゼヴスカ川、リュドゥスカ川が流れる自然豊かな場所にあります。標高は約496m。ペシュテル高原に位置し、周辺にはゴリヤ山、ロゴズナ山などの山地が連なります。基礎自治体の面積は742km²で、100もの村落が含まれています。

歴史

ノヴィ・パザルの地には、古代から人が住んでいました。7世紀から9世紀にかけて建設されたセルビア最古の教会である聖ピョートル・パーヴェル聖堂の下からは、グレコ・イリリアン様式の壮麗な墓が発見されています。ノヴィ・パザルは、中世セルビア王国の首都であったラス（現在のスタリ・ラス）が衰退した後、交易地として発展しました。サラエヴォの創設者であるイーサー＝ベグ・イサコヴィッチによって都市としての地位を確立し、15世紀にはラグーサ共和国の議会で言及されるなど、その名は広く知られていました。

ノヴィ・パザルは、バルカン各地を結ぶ街道の要衝として発展し、ドゥブロヴニク、ニシュ、ソフィア、コンスタンティノープルなど、様々な都市との交易が盛んに行われました。オスマン帝国の旅行家エヴリヤ・チェレビは、17世紀にノヴィ・パザルをバルカンの大都市の一つとして記録しています。15世紀から20世紀にかけては、イェニ・パザル・サンジャクの首都としてオスマン帝国の統治下にありました。1878年のベルリン会議では、サンジャク地方全域がノヴィ・パザル・サンジャクとして特別区域に指定され、1878年から1908年まではオーストリア＝ハンガリー帝国の統治下に置かれました。その後、オスマン帝国の統治に戻りましたが、1912年の第一次バルカン戦争によってオスマン帝国が崩壊し、その重要性を失っていきました。

人口構成

1953年の人口統計によると、ノヴィ・パザル基礎自治体の人口は53,331人で、セルビア人、トルコ人、ユーゴスラビア人などが居住していました。トルコ人やユーゴスラビア人とされる人々の多くはボシュニャク人であり、後の国勢調査ではムスリム人、そして2002年の国勢調査ではボシュニャク人が選択肢として用意されるようになりました。

経済

ノヴィ・パザルは、数世紀にわたり街道の要衝として交易の中心地としての役割を担ってきました。伝統的な手工業も発達し、20世紀には織物産業の中心地となりました。1990年代のユーゴスラビア紛争の影響による国連の制裁下では混乱が生じましたが、織物産業は民間の力強い主導によって発展を続けました。特にジーンズはノヴィ・パザルのブランドとして広く知られるようになりました。しかし、2000年代に入ると、輸入品との競争や民営化の失敗などにより、織物工業は衰退傾向にあります。

文化

ノヴィ・パザルには、多様な文化が融合した歴史的な建造物や文化遺産が数多く残っています。町の西側には、13世紀後半にステファン・ウロシュ1世によって寄進されたソポチャニ修道院があり、スタリ・ラスと共に世界遺産に登録されています。また、9世紀以来の聖ペトル聖堂も世界遺産に含まれています。ノヴィ・パザルを見渡せる丘の上には、12世紀以来のジュルジェヴィ・ストゥポヴィ修道院があり、修復が進められています。アルトゥン・アレムモスクは、バルカン半島最大規模のモスクであり、16世紀に建てられました。その他にも、アミル・アギン・ハン（キャラバンサライ）、ハンマーム（共同浴場）、オスマンの城壁など、オスマン帝国時代の建築物が残されています。

スポーツ

ノヴィ・パザルは、1928年に設立されたサッカークラブチームのFKノヴィ・パザルの本拠地です。サッカーはノヴィ・パザルで最も人気のあるスポーツであり、試合開催時にはスタジアムが満員になります。ハンドボールやバスケットボールも盛んです。

ノヴィ・パザルは、その豊かな歴史と文化、そして多様な民族が共生する魅力的な都市です。

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