スタンダード軽装甲車

ビーバレット：第二次世界大戦を彩ったイギリスの装輪装甲車

第二次世界大戦下、イギリス軍は様々な装甲車を戦線に投入しました。その中で、ビーバレットの名で広く知られるスタンダード四輪車、あるいはスタンダード軽装甲車は、独特の存在感を示しています。本車は、民間車のシャーシをベースに急造された装甲車であり、その簡素ながらも実用的な設計は、当時のイギリス軍の状況を如実に反映しています。

誕生と初期型

1940年、ビーバレットの開発は始まりました。ビーバーブルック卿の提言を受け、スタンダード・モーター・カンパニーが既存の民間車シャーシを流用し、装甲板を鋲接して車体を構築。初期型の装甲は厚さ11mmの鋼板で、76.2mmの樫材で補強するという、簡素ながらも緊急性を反映した構造でした。車体後部と天井は開放されており、防御力は限定的でした。武装はブレン軽機関銃で、傾斜装甲に設けられた銃眼から射撃が行われました。

発展と派生型

初期型の課題を踏まえ、ビーバレットは改良を重ねていきます。後の派生型では、全周装甲が施され、防御力は向上。ブレン軽機関銃を搭載した回転式銃塔を備えるものや、車体上部にヴィッカーズ機関銃を連装で装備するものも登場しました。一部車両にはボーイズ対戦車ライフルが配備され、無線機も搭載されました。生産は1942年まで続けられ、およそ2,980輌が製造されました。

主な派生型として、マークI（原型）、全周装甲と改良されたラジエーターグリルを持つマークII、車体を短縮し、上部構造と銃塔を備えたマークIII（ビーバーバグ）、視界改善のための傾斜装甲改良が施されたマークIVなどが挙げられます。また、ニュージーランドでもフォード製のトラックを基にしたビーバレット（NZ）が生産されました。

運用と評価

ビーバレットはイギリス陸軍とイギリス空軍に配備され、主に警備や訓練任務に用いられました。しかし、その重量過多と複雑な操縦性は、部隊から苦情が寄せられる原因となりました。簡素な設計は、製造コストの低減と迅速な配備に貢献しましたが、運用面では課題を残しました。

現在

現在、数少ない残存車両の一つ（マークIII）がダックスフォード帝国戦争博物館に展示され、当時を知る貴重な証となっています。ビーバレットは、決して華々しい活躍をした装甲車ではありませんでしたが、第二次世界大戦下のイギリス軍にとって、貴重な戦力として貢献したことは間違いありません。その簡素な設計と大量生産は、戦時下の緊急性を反映した象徴であり、歴史的にも重要な存在です。ビーバレットの設計思想や運用実績は、後の装輪装甲車の開発に影響を与えたと言えるでしょう。

参考資料

George Forty - World War Two Armoured Fighting Vehicles and Self-Propelled Artillery, Osprey Publishing 1996, ISBN 978-1-85532-582-1.
I. Moschanskiy - Armored vehicles of the Great Britain 1939-1945 part 2, Modelist-Konstruktor, Bronekollektsiya 1999-02 (И. Мощанский - Бронетанковая техника Великобритании 1939-1945 часть 2, Моделист-Конструктор, Бронеколлекция 1999-02).
* Beaverette Virtual Museum

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