スターティング・オーヴァー

ジョン・レノンの「スターティング・オーヴァー」

「スターティング・オーヴァー」（原題：(Just Like) Starting Over）は、ジョン・レノンが1980年に発表した楽曲であり、彼の音楽キャリアにおける重要な一歩を印象づける作品です。この楽曲は同年の10月23日にアメリカで、24日にイギリスでシングルとしてリリースされ、B面には妻でありアーティストのヨーコ・オノが歌う「キス・キス・キス」が収録されました。レノンが12月8日に亡くなった後、このシングルは全英シングルチャートおよびBillboard Hot 100で第1位を獲得し、その後の影響の大きさを示しました。この曲は、レノンとオノが共に制作したアルバム『ダブル・ファンタジー』からの第一弾シングルとして位置づけられ、レノンの生前にリリースされた最後のシングルともなりました。

楽曲の背景と構成

この曲は、レノンがバミューダ諸島に滞在中に書かれたもので、同時期に「クリーンアップ・タイム」も創作されています。当初のタイトルは「My Life」で、よりロック色が強い楽曲を意図していました。レノンはレコーディング中に「エルヴィス＝オービソン」とこの楽曲を表現していたことからも、彼の音楽的影響を伺わせます。最終的にタイトル変更が行なわれ、「Just Like」が追加され現在の形になりました。

また、伝記作家のアンドリュー・グランド・ジャクソンは、この曲がザ・ビーチ・ボーイズの「ドント・ウォーリー・ベイビー」やバディ・ホリーの「レイニング・イン・マイ・ハート」の影響を受けていることを指摘しています。さらに、歌詞にはビートルズ時代のポール・マッカートニーが書いた「ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード」に似たフレーズも含まれています。

レコーディングの詳細

レコーディングは1980年の8月9日、ニューヨークのザ・ヒット・ファクトリーで行われ、9月25日と26日にレコード・プラント・スタジオでミキシングが行なわれました。レコーディングには多くの才能あるミュージシャンが関与しており、レノン自身がボーカルやエレクトリック・ギターを担当していました。他にもアール・スリックやヒュー・マクラッケンといったギタリスト、トニー・レヴィンがベース、ジョージ・スモールがキーボードを演奏しました。バッキング・ボーカルにはミシェル・シンプソンらが参加し、人間味溢れるハーモニーを提供しています。

評価と影響

「スターティング・オーヴァー」はリリース当時から高い評価を受け、特に『ビルボード』誌では「アップテンポで、魅力的なメロディーと歌詞を持つ」と称賛されました。斬新なアプローチとレノンのボーカルパフォーマンスは、多くのリスナーに新たな感動を与え、音楽業界からの5年間の離脱から復帰後の純粋な熱意を感じさせるものでした。第24回グラミー賞では最優秀レコード賞にもノミネートされ、その音楽的価値は実証されています。

カバーと後の影響

日本では1997年に放送されたテレビドラマ『いちばん大切なひと』の主題歌として使用され、2000年にはダイドードリンコのCMソングとしても起用されました。また、椎名林檎やスガシカオ、ザ・フレーミング・リップスなど、さまざまなアーティストにカバーされ続け、そのメロディーと歌詞は世代を超えて愛されています。レノンの「スターティング・オーヴァー」は、ただの音楽作品を超え、心のよりどころとして多くの人々に親しまれ続けています。

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