スターバースト (ミサイル)

スターバースト (Starburst)

スターバーストは、イギリスで開発された携帯式防空ミサイルシステム（MANPADS）です。1989年より部隊への配備が開始されました。これは、それまで運用されていたジャベリンMANPADSを改良した後継システムにあたります。

開発の背景

イギリス陸軍では、1984年から第2世代のMANPADSとしてジャベリンの運用を開始していました。ジャベリンは無線による半自動指令照準線一致誘導方式（無線SACLOS）を採用していましたが、当時のソ連陸軍が進めていたMi-24攻撃ヘリコプターの配備拡大に対し、その迎撃能力に限界があることが明らかになってきました。このため、イギリスでは次世代の近距離防空ミサイルとしてS14ミサイル（後にスターストリークとなる）の開発が進められていました。この開発を担っていたのは、ジャベリンと同じくショーツ・ミサイル・システムズ（SMS）社でした。SMS社はS14の開発と並行して、そこで開発された最新のレーザーSACLOS誘導システムをジャベリンMANPADSのプラットフォームに統合した新たなミサイルの開発にも着手しました。これがS15ミサイルであり、後にスターバーストとして結実します。

技術的特徴

スターバーストに使用されるS15ミサイルは、ジャベリンMANPADSのロケットモーターや弾体の設計を基盤としています。しかし、誘導方式はジャベリンの無線SACLOSから、S14ミサイルと同様のレーザーSACLOS方式へと変更されました。ミサイルは地上から発射され、射手は目標を追尾し続けます。地上の誘導装置からミサイルに対してレーザー光を照射し、ミサイルはこのレーザーのビーム中心線上を飛行するように誘導されます。

S14ミサイルではレーザー受信機を弾頭部に備えていましたが、S15ミサイル、すなわちスターバーストの場合は、ミサイルの機動によってレーザー信号の受信に障害が発生する可能性を考慮し、ミサイル本体の側面に4枚のアンテナを設置して地上からのアップリンク信号を受信するように設計されています。また、S14（スターストリーク）が高速の運動エネルギー弾であるタングステン製の子弾を放出するのに対し、スターバーストはジャベリンMANPADSと同様の通常型高性能炸薬弾頭を搭載しています。これにより、構造はジャベリンのものを踏襲しつつ、誘導精度と耐妨害性を向上させています。

運用と現状

S15ミサイルは1986年に開発が完了しました。そして1989年からジャベリンMANPADSの後継としてイギリス陸軍への配備が開始されました。実戦においては、1991年の湾岸戦争で投入され、その有効性が確認されました。開発元のショーツ・ミサイル・システムズ社は、2002年にタレス・エア・ディフェンス社に買収されています。

現在、イギリス陸軍においては、より高性能なスターストリークMANPADSへの代替が進められており、スターバーストの配備数は減少傾向にあります。

派生型と関連システム

スターバーストには、運用の形態に応じた複数の派生型が存在します。

スターバースト LML (Lightweight Multiple Launcher)：可搬式の多連装発射機。複数のミサイルを搭載し、より持続的な防空能力を提供します。
スターバースト VML (Vehicle Multiple Launcher)：車両に搭載される多連装発射機。移動しながらの防空や、より重装甲なプラットフォームでの運用に適しています。
スターバースト NML (Naval Multiple Launcher)：艦艇に搭載される発射機。個艦防空能力を付与します。
スターバースト SR2000：特に艦載システムとして、ショーツ・ミサイル・システムズ社とラダマック・ディフェンス・システムズ社が共同で開発した個艦防空システムです。スターバーストミサイルと、ラダマック社製の先進的な光学射撃指揮装置（ビデオカメラ、熱映像装置、レーザー測距儀を統合し、12キロメートルの距離で目標を追尾可能）を組み合わせたシステムです。光学FCSと6連装発射機を合わせた全体の重量は約750キログラムでした。ホライズン計画における近距離防空システムとして提案されましたが、最終的に採用は見送られ、海外への販売も成功しませんでした。

運用国

スターバーストは以下の国々で運用されました。

カナダ
クウェート
マレーシア
イギリス

スターバーストは、ジャベリンからスターストリークへの過渡期における重要なMANPADSであり、レーザーSACLOS誘導方式の導入により、それまでのシステムに比べて迎撃能力を高めたシステムでした。その技術は後の防空システム開発にも影響を与えました。

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