運動エネルギー弾

運動エネルギー弾

運動エネルギー弾（KEP）は、炸薬の爆発力ではなく、弾丸自身の質量、硬度、そして速度によって目標を破壊する兵器です。運動エネルギー利用兵器（KEW）という総称で呼ばれることもあります。これは指向性エネルギー兵器（DEW）に対して、従来型兵器を指す言葉として用いられます。

概要

運動エネルギー弾は、成形炸薬弾（HEAT）や粘着榴弾（HESH）といった化学エネルギー弾に対する対抗手段として発展してきました。具体的には、LOSATやCKEMといった運動エネルギーミサイル、APFSDS（装弾筒付翼安定徹甲弾）のような運動エネルギー徹甲弾、タングステン弾、劣化ウラン弾などが挙げられます。広義には、通常の徹甲弾や銃弾も運動エネルギー弾の一種とみなすことができます。

HEAT弾やHESH弾が中空装甲や飛散防止内張によって効果を減殺されるようになった結果、APFSDSやCKEMのような、弾体自体の速度でユゴニオ弾性限界を超え、これらの防御を突破する弾薬が開発されました。しかし、セラミック複合装甲のように十分な厚みを持つ装甲に対しては、運動エネルギー弾も有効ではありません。

原理

対戦車兵器として使用される運動エネルギー弾頭には、タングステンや劣化ウランが用いられることが多く、これらは硬度と比重に優れているため貫徹力を高めるのに適しています。APFSDSの場合、貫徹力を最大限に高めるため、ダーツの矢のような特殊な形状をしています。砲弾自体の質量は数kg程度ですが、約1,500m/sという非常に高い速度で飛翔することで、3MJ前後の運動エネルギーを発生させます。このエネルギーを一点に集中させることで、ほとんどの戦車装甲を容易に貫徹することが可能になります。

対戦車ミサイルとしては、LOSATやCKEMといった地対地ミサイルが存在します。これらのミサイルは誘導機能を持つため、APFSDSの射程距離（最大2km前後）を大幅に上回る射程（4km～10km）を有しています。これにより、遠距離から一方的に攻撃することが可能になりますが、一発あたりのコストが非常に高くなるというデメリットがあります。

種類・分類

運動エネルギーミサイル (Kinetic Energy Missile)

LOSAT
CKEM
DF-21 (東風21号) 衛星攻撃実験時
RIM-161 スタンダード・ミサイル3（SM-3）
CSM

運動エネルギー弾 (Kinetic Energy Penetrator)

高速徹甲弾（HVAP）
APDS (装弾筒付徹甲弾)
APFSDS (装弾筒付翼安定徹甲弾)

広義の運動エネルギー兵器

銃
大砲
バリスタ
弓矢
投石機
徹甲弾
レールガン
キャニスター弾（戦車対人散弾砲）

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