スターリング (SMG)

スターリング短機関銃：イギリス軍を支えた名銃

第二次世界大戦後、イギリス軍の主力小火器として長く活躍したスターリング短機関銃。その歴史、設計、そして世界各国での使用について詳しく見ていきましょう。

開発の背景と設計

第二次世界大戦中、イギリス軍は安価で大量生産可能なステン短機関銃を広く配備していました。しかし、その粗雑な設計と低い信頼性には多くの問題がありました。より高性能な短機関銃の必要性が高まる中、スターリング・アーマメンツ社のジョージ・ウィリアム・パチェット技師が新たな短機関銃の設計に着手しました。

パチェット技師は、ステン銃の生産設備を流用しつつ、設計を大幅に改良しました。ステン銃と共通する円筒形のレシーバーや右側に突き出たマガジンといった特徴を残しつつも、独立したグリップ、一体型機関部、折りたたみ式銃床など、操作性と信頼性を向上させる多くの工夫が凝らされています。

特に注目すべきは、ボルトに施された螺旋状の溝です。この溝は砂などの異物の侵入を防ぎ、動作の円滑さを確保する役割を果たしました。また、撃発機構も工夫され、射手の負担を軽減する設計となっています。9x19mmパラベラム弾を使用し、シンプルなブローバック方式を採用したスターリング短機関銃は、その堅牢性と信頼性で高い評価を得ることになります。

開発から制式採用まで

パチェット技師による試作銃は、1944年には軍部に提出され、その後長期間に渡る試験が行われました。その間、ライバルとなる他の試作銃との競合もありましたが、最終的にスターリング短機関銃は、その高い信頼性と実用性から1953年にL2A1として制式採用されます。その後、改良型であるL2A2、L2A3と発展し、イギリス軍だけでなく、英連邦諸国を含む世界各国で広く使用されることになります。

世界各国での運用

スターリング短機関銃は、イギリス軍のみならず、世界中の軍隊や警察組織で採用されました。朝鮮戦争、マラヤの緊急事態、ケニアの反乱鎮圧、フォークランド紛争など、数々の紛争でその高い信頼性を証明しました。カナダやインドではライセンス生産も行われ、40万丁以上が生産されたと言われています。

派生型

スターリング短機関銃は、基本型以外にも様々な派生型が存在します。主なものとしては、初期型であるMk.2（L2A1）、改良型のMk.3（L2A2）、Mk.4（L2A3）、サプレッサー付きの特殊型であるMk.5（L34A1）、警察や民間向けのセミオート専用型であるMk.6、銃床のない短銃身型であるMk.7パラなどがあります。これらの派生型は、それぞれの用途や地域に合わせて改良が加えられています。

退役とその後

1990年代初頭、L85突撃銃の採用により、イギリス軍でのスターリング短機関銃の運用は終了しました。その後も、世界各国で運用され続けるものの、製造元であるスターリング社は1988年に倒産。イギリス国内での製造は終了しました。しかし、その高い信頼性と堅牢性から、いまだに一部地域で使用されていると言われています。

まとめ

スターリング短機関銃は、ステン短機関銃の欠点を克服し、高い信頼性と実用性を兼ね備えた傑作短機関銃と言えるでしょう。その歴史は、イギリス軍のみならず、世界各国の紛争の歴史にも深く刻まれています。シンプルな設計ながら、多くの工夫が凝らされたこの銃は、まさに時代を象徴する名銃の一つと言えるでしょう。

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