スティック・メン

スティック・メン（Stick Men）

スティック・メンは、2007年にベースの達人であるトニー・レヴィンと、ドラマーのパット・マステロットを中心に結成されたプログレッシブ・ロック・グループです。彼らの音楽の核となるのは、トニー・レヴィンが操るチャップマン・スティックと、マーカス・ロイターが演奏するタッチギターという独特な楽器群です。これらの楽器とパット・マステロットのパワフルなドラムが一体となり、唯一無二のサウンドを生み出しています。バンドは、これらの楽器をフィーチャーしたプログレッシブ・ロックを追求する場として活動を開始しました。

略歴

結成とラインナップの変遷

バンドの始まりは、2007年にトニー・レヴィンが発表したソロ・アルバム『Stick Man』に遡ります。この作品は、キング・クリムゾンのバンドメイトであるパット・マステロットをドラムに迎え、チャップマン・スティックによる演奏を主体としたものでした。このソロ作品をきっかけに、レヴィン、マステロット、そしてスティック奏者のマイケル・ベルニエの3人によって、スティック・メンが本格的に活動を開始します。

2010年には、ファースト・アルバムとなる『Soup』をリリース。しかし、このアルバムのリリース後まもなく、ベルニエがバンドを離れることになります。同年8月には、新たなメンバーとしてタッチギター奏者のマーカス・ロイターが加入。以降、レヴィン、マステロット、ロイターという現在のトリオ編成が定着し、バンドは第二期へと移行しました。

活動の深化と主要作品

マーカス・ロイターを迎えたバンドは精力的に作品を発表していきます。2011年にはEP盤『Absalom』を、2012年には即興演奏を収めたアルバム『Open』をリリース。2013年2月に発表されたスタジオ・アルバム『Deep』は、多くの楽曲がインストゥルメンタルながらもヘヴィなサウンドが特徴で、マステロットがボーカルをとる「Horatio」のような例外も含まれています。このアルバムには、レヴィンがボストン沖でのホエールウォッチング体験から着想を得た約11分間の音詩も収録されています。

ライブ活動も積極的に行い、2014年1月には初のライブ・アルバム『Power Play』を発表しました。同年10月には、2010年から2014年までの活動をまとめた2枚組のベスト・アルバム『Anthology 2010-2014』をリリース。ディスク1にはスタジオ音源、ディスク2にはライブでの即興演奏が収められ、リミックスやリメイクされた楽曲も含まれています。

特筆すべきは、日本の東京でレコーディングされたライブ・アルバムです。キング・クリムゾンの元・現メンバーとのコラボレーションが実現し、ヴァイオリン奏者デヴィッド・クロスを迎えた『Midori: Live In Tokyo 2015』(2016年リリース)、そしてサックス奏者メル・コリンズと共演した『Roppongi - Live In Tokyo 2017』(2017年リリース)は、ファンにとって重要な作品となっています。

現在の編成で4枚目のスタジオ作品となる『Prog Noir』は2016年に制作・発表されました。このアルバムではボーカル曲が増え、タイトル曲をトニー・レヴィンが、楽曲「Plutonium」をマーカス・ロイターが歌い、プロモーション・シングル「The Tempest」では二人が声を合わせています。

メンバーであるレヴィンとマステロットがキング・クリムゾンでの活動に注力していた時期を経て、2021年末にその活動が一区切りついたことを受け、スティック・メンは2022年から再び本格的に動き出します。約6年ぶりとなるスタジオ作品EP『Tentacles』をリリースし、同年7月にはビルボードライブでの来日公演も実現させるなど、その健在ぶりを示しました。

音楽スタイル

スティック・メンのサウンドは、その使用楽器からもわかるように非常に個性的です。チャップマン・スティックとタッチギターを前面に出すという特徴を持ちながら、彼らの音楽性はアート・ロックやプログレッシブ・ロックの枠組みを基盤としつつ、時にはプログレッシブ・メタルの要素も取り入れています。ライブパフォーマンスにおいては、フリー・ミュージックや即興演奏が重要な要素を占めており、メンバーそれぞれの高い技術力と相互作用が発揮される場となっています。

彼らは、トニー・レヴィンとパット・マステロットが在籍するキング・クリムゾンとの繋がりを大切にしており、ロバート・フリップの楽曲やキング・クリムゾンのレパートリーを演奏することもあります。また、クラシック音楽への敬意も示しており、ストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲を独自の解釈で演奏することも、ライブにおける定番の一つとなっています。

作品全体としてはインストゥルメンタルが中心ですが、随所でボーカル曲もフィーチャーされています。ボーカルは主にトニー・レヴィンが担当しますが、マーカス・ロイターやパット・マステロットが歌う楽曲も存在します。

現ラインナップ (2022年7月時点)

トニー・レヴィン (Tony Levin) – スティック、ボーカル (2007年– )
パット・マステロット (Pat Mastelotto) – ドラムス (2007年– )
マーカス・ロイター (Markus Reuter) – タッチギター (2010年– )

旧メンバー

マイケル・ベルニエ (Michael Bernier) – スティック、ボーカル (2007年-2010年)

主なディスコグラフィ

スタジオ・アルバム (EP含む)

Stick Men (2009年)
『Soup』 (2010年)
Absalom (2011年)
Open (2012年)
Deep (2013年)
『Prog Noir - 暗黒への進化』 (2016年)
Tentacles (2022年)

主なライブ・アルバム

Power Play (2014年)
『Midori: Live In Tokyo 2015』(2016年) ※デヴィッド・クロス参加
『Roppongi - Live In Tokyo 2017』(2017年) ※メル・コリンズ参加
『ライヴ・イン・ジャパン2020 - 終焉』(2020年) ※ゲイリー・ハズバンド参加
『ライヴ・イン・ジャパン2022』(2023年)

コンピレーション・アルバム

* 『Anthology 2010-2014』 (2014年)

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