スティーヴン・マロリー
スティーヴン・ラッセル・マロリー（Stephen Russell Mallory, 1813年 - 1873年11月9日）は、アメリカ合衆国とアメリカ連合国の双方で重要な役割を担った政治家です。彼はアメリカ合衆国上院議員を1851年から1861年まで務め、その後、アメリカ連合国（南部連合）の海軍長官として1861年から1865年まで活躍しました。
マロリーは、1813年にイギリス領西インド諸島のトリニダード島ポートオブスペインで生まれました。2歳の時に父親を亡くし、1820年に家族とともにアメリカ合衆国に移住。母親はフロリダ州キー・ウェストで下宿屋を経営しました。マロリーはアラバマ州モービルとペンシルベニア州ナザレスの学校で教育を受けましたが、十分な教育を受けることはできなかったようです。しかし、1833年にキー・ウェストの税関検査官に就職し、その傍らで法律を学びました。1840年に弁護士として認可されると、キー・ウェストで法律事務所を開業し、行政機関からの様々な仕事を引き受けました。1837年から1845年までフロリダ州モンロー郡の郡判事を務め、1845年にはキー・ウェスト港の税関長に就任。1838年には、フロリダ州ペンサコーラの名家の娘と結婚しています。
1850年、マロリーは穏健派の民主党員としてアメリカ合衆国上院議員に選出され、1857年までその任期を全うしました。1856年の選挙でも再選を果たしましたが、南北戦争が勃発した1861年に辞職しました。上院議員として、彼はフロリダ州における海軍事情に通じた人物として知られ、上院海軍委員会の委員長を務めました。彼は、老齢または無能な士官を退役させ、装甲砲艦の開発を支援するなど、海軍改革に尽力しましたが、必要な資金を十分に調達することはできませんでした。
1860年の大統領選挙でエイブラハム・リンカーンが当選すると、マロリーは南部諸州の政治家たちに懐柔を促しました。しかし、マロリーは南部への深い愛着を持っており、フロリダ州が連邦を離脱するとそれに追随しました。アメリカ連合国が建国されると、ジェファーソン・デイヴィス大統領は、海軍事務におけるマロリーの知識と個人的な親交から、彼を連合国海軍長官に任命しました。
南北戦争開戦時、連合国海軍はわずか15隻の軍艦しか保有しておらず、海軍士官の多くは合衆国に残留していました。また、連合国陸軍省は海軍に協力的でなく、資金調達も極めて困難な状況でした。しかし、マロリーはイギリスを中心にヨーロッパ各国から艦船を調達しました。その中でも有名なのがイギリスから購入したスループ艦「アラバマ」です。この艦は、大西洋とメキシコ湾で通商破壊活動を行い、1864年6月に撃沈されるまで、アメリカ合衆国の艦船を悩ませ続けました。また、マロリーはアメリカ合衆国の海上封鎖を打破するために、多数の装甲艦建造計画を立てましたが、経済状況が悪化し、資金や資材不足のため計画を完全に遂行することはできませんでした。海軍長官としてのマロリーの最大の課題は、海軍に必要な資金を政府高官に納得させることでした。
マロリーは非常に革新的な人物でもありました。連合国の工場は合衆国の工場と競合せず、戦争初期にはナッシュビル、ニューオーリンズ、メンフィス、ノーフォークなどの工業拠点を失いましたが、連合国海軍は戦争中に22隻もの精巧な装甲艦を建造しました。さらに、魚雷や潜水艦などの実験段階の兵器を実戦投入し、水陸両用作戦の導入も研究しました。しかし、これらの兵器や作戦は決定的な成果を上げることができませんでした。
ロバート・E・リー将軍がピーターズバーグから撤退し、連合国の首都リッチモンドが陥落すると、マロリーは他の閣僚とともに逃亡しました。連合国の敗北が確実になると、マロリーはゲリラ戦での抵抗に反対しました。その後、マロリーはアメリカ合衆国軍に拘束され、ニューヨーク州のラファイエット砦に約10ヶ月間収容されました。
釈放後、マロリーは弁護士業を再開しました。彼は、合衆国軍による南部復興活動に反対し、黒人に参政権を与えることにも反対しました。1873年、マロリーはフロリダ州ペンサコーラで亡くなり、同市内の聖マイケル墓地に埋葬されました。同時代には連合国の敗北をマロリーの責任とする声も一部ありましたが、後世の歴史家は彼の功績を高く評価しています。
父親: チャールズ・マロリー (Charles Mallory, ????-1822)
母親: エレン・ラッセル (Ellen Russell, 1792-1855)
妻: アンジェラ・シルヴァニア・モレノ (Angela Sylvania Moreno, 1815-1901)
結婚: 1838年7月19日、フロリダ州ペンサコーラにて
子供:
マーガレット・マロリー (Margaret Mallory, 1839-1887)
エレン・マロリー (Ellen Mallory, 1840-1843)
フランシス・モレノ・マロリー (Francis Moreno Mallory, 1844-1846)
フランシス・モレノ・マロリー (Francis Moreno Mallory, 1847-1858)
スティーヴン・ラッセル・マロリー (Stephen Russell Mallory, 1848-1907)
チャールズ・アルバート・マロリー (Charles Albert Mallory, 1850-????)
アッティラ・フィッツパトリック・マロリー (Atilla Fitzpatrick Mallory, 1852-1907)
ルビ・アンジェラ・マロリー (Ruby Angela Mallory, 1855-1902)
ネリー・B・マロリー (Nellie B. Mallory, 1856-1858)
Jon L. Wakelyn: Biographical Dictionary of the Confederacy Louisiana State University Press, Baton Rouge ISBN 0-8071-0092-7
The Civil War Almanac World Almanac Publications, New York, NY ISBN 0-911818-36-7
Rembert W. Patrick: Jefferson Davis and his cabinet Louisiana State University Press, Baton Rouge, 1944
* United States Congress. "スティーヴン・マロリー (id: M000084)". Biographical Directory of the United States Congress (英語).
生い立ちと初期のキャリア
マロリーは、1813年にイギリス領西インド諸島のトリニダード島ポートオブスペインで生まれました。2歳の時に父親を亡くし、1820年に家族とともにアメリカ合衆国に移住。母親はフロリダ州キー・ウェストで下宿屋を経営しました。マロリーはアラバマ州モービルとペンシルベニア州ナザレスの学校で教育を受けましたが、十分な教育を受けることはできなかったようです。しかし、1833年にキー・ウェストの税関検査官に就職し、その傍らで法律を学びました。1840年に弁護士として認可されると、キー・ウェストで法律事務所を開業し、行政機関からの様々な仕事を引き受けました。1837年から1845年までフロリダ州モンロー郡の郡判事を務め、1845年にはキー・ウェスト港の税関長に就任。1838年には、フロリダ州ペンサコーラの名家の娘と結婚しています。
アメリカ合衆国上院議員時代
1850年、マロリーは穏健派の民主党員としてアメリカ合衆国上院議員に選出され、1857年までその任期を全うしました。1856年の選挙でも再選を果たしましたが、南北戦争が勃発した1861年に辞職しました。上院議員として、彼はフロリダ州における海軍事情に通じた人物として知られ、上院海軍委員会の委員長を務めました。彼は、老齢または無能な士官を退役させ、装甲砲艦の開発を支援するなど、海軍改革に尽力しましたが、必要な資金を十分に調達することはできませんでした。
南北戦争と連合国海軍長官
1860年の大統領選挙でエイブラハム・リンカーンが当選すると、マロリーは南部諸州の政治家たちに懐柔を促しました。しかし、マロリーは南部への深い愛着を持っており、フロリダ州が連邦を離脱するとそれに追随しました。アメリカ連合国が建国されると、ジェファーソン・デイヴィス大統領は、海軍事務におけるマロリーの知識と個人的な親交から、彼を連合国海軍長官に任命しました。
南北戦争開戦時、連合国海軍はわずか15隻の軍艦しか保有しておらず、海軍士官の多くは合衆国に残留していました。また、連合国陸軍省は海軍に協力的でなく、資金調達も極めて困難な状況でした。しかし、マロリーはイギリスを中心にヨーロッパ各国から艦船を調達しました。その中でも有名なのがイギリスから購入したスループ艦「アラバマ」です。この艦は、大西洋とメキシコ湾で通商破壊活動を行い、1864年6月に撃沈されるまで、アメリカ合衆国の艦船を悩ませ続けました。また、マロリーはアメリカ合衆国の海上封鎖を打破するために、多数の装甲艦建造計画を立てましたが、経済状況が悪化し、資金や資材不足のため計画を完全に遂行することはできませんでした。海軍長官としてのマロリーの最大の課題は、海軍に必要な資金を政府高官に納得させることでした。
マロリーは非常に革新的な人物でもありました。連合国の工場は合衆国の工場と競合せず、戦争初期にはナッシュビル、ニューオーリンズ、メンフィス、ノーフォークなどの工業拠点を失いましたが、連合国海軍は戦争中に22隻もの精巧な装甲艦を建造しました。さらに、魚雷や潜水艦などの実験段階の兵器を実戦投入し、水陸両用作戦の導入も研究しました。しかし、これらの兵器や作戦は決定的な成果を上げることができませんでした。
連合国崩壊後
ロバート・E・リー将軍がピーターズバーグから撤退し、連合国の首都リッチモンドが陥落すると、マロリーは他の閣僚とともに逃亡しました。連合国の敗北が確実になると、マロリーはゲリラ戦での抵抗に反対しました。その後、マロリーはアメリカ合衆国軍に拘束され、ニューヨーク州のラファイエット砦に約10ヶ月間収容されました。
釈放後、マロリーは弁護士業を再開しました。彼は、合衆国軍による南部復興活動に反対し、黒人に参政権を与えることにも反対しました。1873年、マロリーはフロリダ州ペンサコーラで亡くなり、同市内の聖マイケル墓地に埋葬されました。同時代には連合国の敗北をマロリーの責任とする声も一部ありましたが、後世の歴史家は彼の功績を高く評価しています。
家族
父親: チャールズ・マロリー (Charles Mallory, ????-1822)
母親: エレン・ラッセル (Ellen Russell, 1792-1855)
妻: アンジェラ・シルヴァニア・モレノ (Angela Sylvania Moreno, 1815-1901)
結婚: 1838年7月19日、フロリダ州ペンサコーラにて
子供:
マーガレット・マロリー (Margaret Mallory, 1839-1887)
エレン・マロリー (Ellen Mallory, 1840-1843)
フランシス・モレノ・マロリー (Francis Moreno Mallory, 1844-1846)
フランシス・モレノ・マロリー (Francis Moreno Mallory, 1847-1858)
スティーヴン・ラッセル・マロリー (Stephen Russell Mallory, 1848-1907)
チャールズ・アルバート・マロリー (Charles Albert Mallory, 1850-????)
アッティラ・フィッツパトリック・マロリー (Atilla Fitzpatrick Mallory, 1852-1907)
ルビ・アンジェラ・マロリー (Ruby Angela Mallory, 1855-1902)
ネリー・B・マロリー (Nellie B. Mallory, 1856-1858)
参考文献
Jon L. Wakelyn: Biographical Dictionary of the Confederacy Louisiana State University Press, Baton Rouge ISBN 0-8071-0092-7
The Civil War Almanac World Almanac Publications, New York, NY ISBN 0-911818-36-7
Rembert W. Patrick: Jefferson Davis and his cabinet Louisiana State University Press, Baton Rouge, 1944
外部リンク
* United States Congress. "スティーヴン・マロリー (id: M000084)". Biographical Directory of the United States Congress (英語).
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