スティーヴ・ハウ (ギタリスト)

スティーヴ・ハウ：プログレッシブ・ロックの巨匠

スティーヴ・ハウ（Steve Howe, Stephen James Howe, 1947年4月8日 - ）は、イギリス・ロンドン出身のギタリストであり、プログレッシブ・ロック界において多大な影響を与えた人物です。1960年代から数々のプロジェクトに参加し、特にイエス (Yes) とエイジア (Asia) での活動は、彼の音楽キャリアにおけるハイライトと言えるでしょう。

音楽の旅路

ハウは1964年にビート・バンド、シンディキャッツでプロとしてのキャリアをスタートさせました。その後、1965年にはキース・ウェストらとジ・イン・クラウドを結成。1967年にはバンド名をトゥモロウ (Tomorrow) に改名し、サイケデリック・ロックの分野で注目を集めました。トゥモロウではアルバム制作にも関わり、サイケデリックなサウンドを追求しました。また、音楽プロデューサーのマーク・ワーツが手掛けたシングル「Excerpt from "A Teenage Opera"」のレコーディングにも参加し、ギターを演奏。このシングルはヨーロッパでヒットし、全英シングルチャートで2位を記録しました。この楽曲は、ロック・オペラの先駆けとしても知られています。

ボダスト、P・P・アーノルドやデラニー&ボニーのツアーバンドを経て、1970年にイエスに加入。ピーター・バンクスの後任として、 Howeはイエスのサウンドに革新をもたらしました。アルバム『危機 (Close to the Edge)』や『海洋地形学の物語 (Tales from Topographic Oceans)』などで披露された、他に類を見ない多彩なギターサウンドと作曲能力は、イエスの躍進に大きく貢献。バンドをプログレッシブ・ロックの代表格へと押し上げました。

1981年にイエスが活動を休止すると、1982年にはスーパーグループ、エイジアを結成し、商業的な成功を収めました。1983年にイエスがトレヴァー・ラビンをギタリストに迎えて活動を再開すると、1984年にエイジアを脱退。1988年にはイエスの派生バンド、アンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウ (Anderson Bruford Wakeman Howe) に参加しました。その後、紆余曲折を経て1996年にイエスに再加入し、現在に至るまで中心メンバーとして活躍しています。

多彩な才能

1980年代には、スティーヴ・ハケットとGTRを結成して活動したほか、イエスの同僚であったトレヴァー・ホーンが設立したZTTレコーズの関連アーティストの作品や、I.R.S.レコーズのアニマル・ロジックのデビュー・アルバムへの客演、インストゥルメンタル専門レーベル「ノー・スピーク」シリーズへの参加など、様々なプロジェクトでその才能を発揮しました。1991年には、クイーンのアルバム『イニュエンドウ (Innuendo)』のタイトル曲のレコーディングにフラメンコギターで参加しています。

1970年代からソロ活動も並行して行っていましたが、1990年代以降はより精力的にソロ活動を展開しています。2007年には、ドラマーである長男ディラン・ハウ、ハモンドオルガニストのロス・スタンリーとスティーヴ・ハウ・トリオを結成し、ヨーロッパをツアー。また、キーボーディストの次男ヴァージル・ハウとディランをメンバーに加えたファミリー・バンド「スティーヴ・ハウ・レメディ」としても活動しました。

2006年にはエイジアのオリジナル・メンバーによる再結成に参加し、ライブツアーを行いながら2008年4月に新作アルバム『フェニックス (Phoenix)』を発表。同年夏にはイエスの再始動となるアメリカ・ツアーにも参加し、エイジアとしても2013年まで活動を続けました。2009年のイエスとエイジアの合同アメリカツアーでは、両バンドのメンバーとして全編の演奏を務め上げました。2010年にはイエス、エイジア、スティーヴ・ハウ・トリオのツアーに参加するなど、70歳を超えてもなお精力的な活動を展開しています。

独自の奏法

ハウのプレイスタイルは、既存のギターリストとは一線を画す独特なものです。ロック、カントリー、ジャズ、クラシック、フラメンコ、トラッドなど、多様な音楽的要素を融合させた独自の奏法が特徴です。彼は、エレクトリック・ギターやアコースティック・ギターに加え、エレクトリック・シタール、ペダル・スティール、リュート、マンドリンなど、様々な弦楽器を巧みに演奏します。ライブ演奏では、1曲の中で異なる楽器を持ち替えることもあります。

スティーヴ・ハウは、その卓越した音楽性と創造性で、プログレッシブ・ロックの歴史に輝かしい足跡を残しました。彼の音楽は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

ディスコグラフィー(一部抜粋)

ビギニングス (1975年)
スティーヴ・ハウ・アルバム (1979年)
タービュランス (1991年)
ホームブリュー1 (1996年)
クォンタム・ギター (1998年)
ポートレイツ・オブ・ボブ・ディラン (1999年)
タイム (2011年)
ミラー・トゥ・ザ・スカイ(イエス)(2023年)

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