イニュエンドウ

クイーン『イニュエンドウ』

イギリスのロックバンド、クイーンが1991年に発表した14枚目のアルバム『イニュエンドウ』は、ボーカルのフレディ・マーキュリーが存命中にリリースされた最後のアルバムという点で、特別な意味を持つ作品です。各曲の作曲は、メンバー全員がクレジットされており、これは前作『ザ・ミラクル』から採用された、印税分配におけるトラブル回避と、セッション形式での楽曲制作を重視した結果です。複数の曲のモチーフを繋ぎ合わせる手法も用いられ、複雑な構成の楽曲が生み出されました。

アルバムは、マーキュリーの死という事実を抜きにして評価することは難しいものの、イギリスのチャートでは初登場1位を記録するなど、ヨーロッパ的な音楽性への回帰が歓迎されました。本国イギリスでは、5曲がシングルカットされ、チャート上位にランクインしました。

アルバムタイトルの「イニュエンドウ」は、ほのめかしや風刺といった意味を持ち、マーキュリーが好んで使っていた言葉です。アルバムジャケットには、19世紀のフランス風刺画家J・J・グランヴィルのイラスト「Jaggler of Universes」が使用され、アートワーク全体にもグランヴィルの作品が採用されました。インナースリーブの写真やプロモーションビデオでは、マーキュリーの病状を隠すために、厚めのメークやモノクローム、アニメーションなどの加工が施されています。

収録曲

イニュエンドウ (Innuendo)
フレディ・マーキュリーとロジャー・テイラーが作詞・作曲。プログレッシブ・ロックバンド、イエスのギタリストであるスティーヴ・ハウがフラメンコギターで参加。
プロモーションビデオは、過去の映像をコラージュし、ダ・ヴィンチ風、ピカソ風、ポロック風に加工した作品。複雑な構成で、ラヴェルのボレロ風リズムから始まり、フラメンコギターソロを含む変拍子を経て、再びボレロ風メロディーに戻ります。
狂気への序曲 (I'm Going Slightly Mad)
フレディ・マーキュリー作詞・作曲。歌詞は、フレディの友人で舞台俳優であるピーター・ストレイカーとの会話が基になっている。プロモーションビデオは、フレディが道化師を演じ、ペンギンやゴリラのぬいぐるみが登場するユーモラスな作品です。
ヘッドロング (Headlong)
ブライアン・メイ作詞・作曲。当初、ブライアンは自分のソロアルバム用に考えていた曲だが、クイーンの楽曲として採用されました。プロモーションビデオは、スタジオでの演奏シーンが中心。2013年リマスター盤には、ブライアンがボーカルを務めるデモバージョンが収録されています。
アイ・キャント・リヴ・ウィズ・ユー (I Can't Live With You)
ブライアン・メイ作詞・作曲。ヘッドロング同様、ソロ用に考えていた曲。ベストアルバム「クイーン・ロックス」には、演奏を差し替えたバージョンが収録されています。
ドント・トライ・ソー・ハード (Don't Try So Hard)
フレディ・マーキュリー作詞・作曲。
ライド・ザ・ワイルド・ウインド (Ride The Wild Wind)
ロジャー・テイラー作詞・作曲。リマスター盤には、ロジャーがボーカルを務めるデモバージョンが収録されています。
神々の民 (All God's People)
フレディ・マーキュリーとマイク・モランが作詞・作曲。元々はフレディのソロアルバムに収録予定だった曲。
輝ける日々 (These Are The Days Of Our Lives)
ロジャー・テイラー作詞・作曲。フレディの生前、最後に撮影されたクイーンのプロモーションビデオです。フレディの死後、シングル「ボヘミアン・ラプソディ」のB面に収録されました。
愛しきデライラ (Delilah)
フレディ・マーキュリー作詞・作曲。フレディが飼っていた愛猫の名前がタイトルになっています。ブライアンがトークボックスで猫の鳴き声を表現しています。
ザ・ヒットマン (The Hitman)
フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ、ジョン・ディーコンが作詞・作曲。フレディ原案の曲をブライアンがギターで演奏しやすいように移調しています。
ビジュウ (Bijou)
フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ作詞・作曲。
ショウ・マスト・ゴー・オン (The Show Must Go On)
ブライアン・メイ、ジョン・ディーコン、ロジャー・テイラー作詞・作曲。フレディ・マーキュリー追悼コンサートではエルトン・ジョンが歌い、モーリス・ベジャール・バレエ団でも使用されています。

担当

フレディ・マーキュリー: リードボーカル、コーラス、ピアノ、キーボード、ドラムマシン
ブライアン・メイ: エレクトリックギター、アコースティックギター、リードボーカル、コーラス、キーボード、ピアノ、ドラムマシン、スライドギター
ジョン・ディーコン: エレクトリックベース、キーボード
ロジャー・テイラー: ドラムス、コーラス、パーカッション、キーボード、ドラムマシン、リードボーカル

外部ミュージシャン

スティーヴ・ハウ: フラメンコギター
マイク・モラン: キーボード
デヴィッド・リチャーズ: キーボード

もう一度検索