ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック

ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック（STF）

ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロック（Stepover Toehold With Facelock）は、プロレスで使用される関節技の一種であり、略称はSTF（エス・ティー・エフ）として知られています。

概要

STFは、うつ伏せ状態の相手に対し、片脚を両脚で挟み込んで固定し、足首と膝を極めます。その状態から、自身が覆いかぶさるようにして相手の顔面を抱え込み、フェイスロックのように締め上げるという複合的な関節技です。この技は、関節技であると同時に締め技としての性質も持ち合わせています。

STFの原型は、ルー・テーズがクロスフェイスの呼称で使用していた、相手に実力差を見せつけるための裏技的なものでした。テーズ道場では頻繁に用いられていましたが、当時はまだ名前がありませんでした。

初期のSTFは、自身の片腕で相手の反対側の腕の手首を掴み、もう片方の腕を逆手にして肘辺りを相手の顔面に押し当てて締め上げる、相手の全身をねじ切るような荒々しい技でした。その後、セッド・ジニアスがフェイスロック式を考案し、テーズ道場でコーチを受けた蝶野正洋がこの技をフィニッシュ・ホールドとして使用したことで、広く知られるようになりました。

主な使用者

蝶野正洋がSTFの第一人者として広く知られていますが、他にもセッド・ジニアス、テーズ道場の師範代であるマーク・フレミング、テリー・ゴディ、ゲーリー・オブライト、本田多聞、ヒデオ・イタミ、BUSHI、ジュリアなどがこの技を使用しています。また、ジョン・シナはSTF-Uという名称でこの技を使用していましたが、末尾の「F_U」が不適切な意味合いを含むため、後に単にSTFという名称に変更しています。Sareeeは、蝶野正洋からSTFの使用許可を得た最初の選手です。

派生技

STFには数多くの派生技が存在します。

元祖STF: 蝶野正洋のオリジナル技で、相手の片腕を取って首に巻きつけ、相手自身に締めさせるという独特な技です。原型STFが「元祖STF」と呼ばれることもあります。
原型STF: 蝶野正洋のオリジナル技で、相手の顎から右側面を左手で押さえ、左側に力を加えます。通常のSTFからの連携で使用されることもありました。
裏STF: 通常のSTFを裏返しにしたような形で相手の首を絞める技で、1993年のG1 CLIMAX準決勝で馳浩が蝶野正洋に使用し、勝利を収めています。
裏原型STF: 蝶野正洋のオリジナル技で、原型STFの体勢から相手を上に体勢を入れ替えます。
クロス式STF: 蝶野正洋のオリジナル技で、相手の両足をクロスさせて固定し、動きを封じることでロープエスケープを困難にし、タップを奪いやすくします。主にドーム大会などの大きなイベントで使用されます。
腕極め式STF: 蝶野正洋のオリジナル技で、相手の顔面ではなく腕を取るSTFです。
羽根折り固め式STF: 蝶野正洋のオリジナル技で、上半身を羽根折り固めのような状態で固めます。
STS: 蝶野正洋のオリジナル技で、相手の頭部をフェースロックではなく、スリーパーホールドに捉えます。
裏STS: 蝶野正洋のオリジナル技で、STSの体勢から相手を上に体勢を入れ替えます。
FTS: 蝶野正洋のオリジナル技で、STFの体勢から相手を上に体勢を入れ替えることで、技名をSTFの逆にしたものです。馳浩の裏STFとは異なり、トーホールドが完全に決まっている状態で返します。
羽交い締め式STF: セッド・ジニアスのオリジナル技で、フルネルソンで捕らえた状態からSTFに移行します。
片羽交い締め式STF: セッド・ジニアスのオリジナル技で、相手の上半身をハーフネルソンに捕らえた状態でのSTFです。
サソリ固め式STF: セッド・ジニアスのオリジナル技で、足のフックが通常のSTFと異なり、サソリ固めからステップオーバーして相手の両脚をフックして動けなくさせた状態のSTFです。
オールド・ボーイ: AKIRAのオリジナル技で、相手の上半身をワンハンド・コブラツイストに極める変形のSTFです。
ハード・ロック: リッキー・フジのオリジナル技で、相手の両足をリバース・インディアン・デスロックで極めた状態でフェイスロックに捕らえる変形のSTFです。
タモンズ・シューター: 本田多聞のオリジナル技で、STFの形からフェイスロックをかけている腕を片羽絞めに移行し、さらに仰向けになることで完成する複合サブミッションです。
志賀絞め: 志賀賢太郎のオリジナル技で、STFの形からフェイスロックをかけている腕を片羽絞めに移行し、さらに仰向けになることで完成する複合サブミッションです。小橋建太が命名しました。
STF（ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・ファッション）: ミラノコレクションA.T.が使用する技で、相手の上半身をフルネルソンの体勢で極めてからSTFの体勢で極めます。
リーガル・ストレッチ: ウィリアム・リーガルのオリジナル技で、相手の脇の下をくぐってフェイスロックで極めることで肩も同時に極めているのが特徴です。
ピノイ・ストレッチ: TJパーキンスのオリジナル技で、うつ伏せ状態の相手の左足を両足で挟み込みながら相手の上におおいかぶさり、左腕を自らの左脇下に抱え込んで頭部を両手でクラッチして絞め上げる変型STFです。STFにコブラツイストを合わせた複合技です。

STFは、その多様なバリエーションと使い手によって、プロレスの試合を彩る重要な技の一つとなっています。

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