ステファン・ウロシュ5世 (セルビア皇帝)

ステファン・ウロシュ5世：セルビア帝国の黄昏

ステファン・ウロシュ5世（1336年 - 1371年）は、セルビア帝国の王（1346年 - 1355年）および皇帝（1355年 - 1371年）として知られています。父はセルビア皇帝ステファン・ウロシュ4世ドゥシャン、母はブルガリア皇帝イヴァン・アレクサンダルの姉妹ヘレナであり、一人息子として生まれました。

共同統治者から皇帝へ

1346年、父ウロシュ4世がセルビア皇帝に即位すると、ウロシュ5世はセルビア王として戴冠され、帝国の共同統治者となります。しかし、1355年にウロシュ4世が崩御すると、皇帝の座を引き継ぎますが、その治世は困難に満ちたものでした。

帝国の衰退

ウロシュ5世は、父が築き上げた強大な帝国を維持するだけの力量を持ち合わせていませんでした。各地の王族や有力領主が帝国の支配から離れ、独自の動きを見せるようになります。セルビア帝国は、事実上、地方領主たちの緩やかな連合体へと変質し、中にはウロシュ5世の主権を認めない者も現れました。

1356年には、叔父であるエピロス専制侯シメオン・ウロシュ・パレオロゴスがセルビア帝位を主張し、ウロシュ5世はこれに対処せざるを得なくなります。シメオン・ウロシュをエピロス・テッサリアに追い出すことに成功するものの、彼は自身の領地で「ローマ人とセルビア人の皇帝」を自称し続けました。この事態は、ウロシュ4世が征服した地域が、ウロシュ5世の統制下から離れていく一因となります。

独立勢力の台頭

母ヘレナも帝国の維持に貢献することはなく、半独立状態にあったセラエのデスポット・ヨヴァン・ウグリェシャに協力していました。ウグリェシャの他にも、ヴァルダル川左岸を支配するデヤノヴィチ兄弟、ツルナゴーラ（モンテネグロ）からアルバニアにかけての地域に独立政権を築いたバルシッチ家、北セルビアを支配するラザル・フレベリャノヴィチ、西マケドニアを支配するヴカシン・ムルニャヴチェヴィチといった勢力が台頭しました。1365年には、ヴカシンがウロシュ5世の共同統治者としてセルビアを支配するようになります。ウロシュ5世の治世末期には、帝国の直轄地はシャル山脈とダニューブ川の間の地域にまで縮小していました。

オスマン帝国の侵攻と帝国の終焉

1360年代以降、オスマン帝国がバルカン半島への侵攻を開始すると、各地で独立したセルビア諸侯は、互いに争うことを止め、反オスマン連合を結成します。しかし、1371年のマリツァの戦いでセルビア貴族の連合軍はオスマン軍に敗北し、ウグリェシャとヴカシンが戦死します。同年12月、ウロシュ5世も子を遺さずに亡くなり、セルビア帝国は事実上崩壊しました。

ウロシュ5世の死後、セルビアで最も有力な人物となったラザル・フレベリャノヴィチは、皇帝や王の称号を用いず、「公（Knez）」を名乗りました。ラザルは領地の割譲と引き換えにボスニア王国に支援を求め、1376年にはボスニア王スチェパン・トヴルトコ1世が「セルビア人、ボスニア、沿岸地方の王」として戴冠しました。1389年のコソボの戦いの後、セルビアはオスマン帝国の臣下となりますが、1459年のスメデレヴォ陥落まで、ラザルの子孫がセルビアを統治しました。

ウロシュ5世は、セルビア正教会によって列聖されています。彼の遺体は、フルシュカゴラのヤザク修道院に埋葬されています。

ステファン・ウロシュ5世の治世は、セルビア帝国の衰退を象徴する時代でした。彼の死後、セルビアはオスマン帝国の支配下に入り、長きにわたる苦難の時代を迎えることになります。

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