シメオン・ウロシュ・パレオロゴス

シメオン・ウロシュ・パレオロゴスの生涯：イピロスとセサリアを統べた皇帝

シメオン・ウロシュ・パレオロゴス（生年不詳 - 1371年12月4日）は、セルビア王ステファン・ウロシュ3世デチャンスキと、東ローマ帝国パレオロゴス家出身のマリアの間に生まれました。異母兄にステファン・ウロシュ4世ドゥシャン、義兄弟にニキフォロス2世ドゥカス・オルシーニがいます。彼はイピロス専制公（1350年 - 1356年）およびセサリア「皇帝」（1359年 - 1371年）として、激動の時代を生きました。

生い立ちとセルビア宮廷

母マリアは東ローマ皇帝アンドロニコス2世パレオロゴスの血を引いており、シメオンもその血統を受け継いでいます。生年は不明ですが、母の結婚時期から1331年前後と考えられています。兄ウロシュ4世とは20歳ほど年齢が離れていました。

1337年、東ローマ帝国によるイピロス専制公国併合後、シメオンは故専制公の娘ソマイスと結婚することになります。1346年にドゥシャンが「皇帝」として戴冠すると、シメオンも専制公に叙せられました。1350年頃にソマイスと結婚し、イピロス地方の統治官となります。隣接するセサリアは、ドゥシャンの娘婿グルグール・プレリュブが統治していました。

帝位への野望とイピロス・セサリア

1355年、兄ウロシュ4世とプレリュブが相次いで死去すると、セルビア本国とイピロス・セサリアは政治的空白状態となります。シメオンは帝位継承とイピロス・セサリア統合を目指しますが、1356年、ソマイスの兄弟ニキフォロス2世の攻撃を受け、カストリアに追いやられます。帝位争いは決着がつかないまま、1359年にニキフォロス2世が死去したため、シメオンは再びイピロス・セサリアの掌握を目指し、成功します。トリカラに拠点を置き、「皇帝」として戴冠しました。

分裂と統治の苦難

ニキフォロス2世の失策は、アルバニア人の勢力を過小評価したことにありました。セルビア人は少数派であり、統治機構も未熟だったため、シメオンはイピロス・セサリアの一人支配を断念します。アルバニア人勢力の強いイピロス南部を二人の族長に分け与え、それぞれに専制公の称号を与えました。しかし、その関係は名目的なものに過ぎず、イピロスは事実上三分されることになります。

ヨアニナを含むイピロス北中部を確保しようとしましたが、アルバニア人の北進に苦慮します。プレリュブの遺児トマ・プレリュボヴィチを娘マリアと結婚させ、ヨアニナの支配者としますが、彼も独立勢力となります。シメオンの手元には、セサリアと皇帝の称号のみが残されました。

死とネマニッチ朝の終焉

1371年12月4日、シメオンは甥のウロシュ5世が死去したのと同じ日に亡くなりました。この日は、ネマニッチ朝が実質的に断絶した日となります。シメオンには二人の息子と一人の娘がおり、長男ヨヴァン・ウロシュ・パレオロゴスが皇帝位を継承しましたが、後に修道士となりました。娘のマリアはトマ・プレリュボヴィチと結婚後、エザウ・ブオンデルモンティと再婚し、彼にイピロス専制公位を伝えました。

シメオン・ウロシュ・パレオロゴスの生涯は、セルビアと東ローマ帝国の間で揺れ動いた、激動の時代の縮図と言えるでしょう。彼の死後、ネマニッチ朝は終焉を迎え、バルカン半島は新たな時代へと向かうことになります。

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