ステファン・ヴラディスラヴ (セルビア王)

ステファン・ヴラディスラヴ：動乱の時代のセルビア王

ステファン・ヴラディスラヴ1世（1198年? - 1264年）は、セルビア王国の王として1233年から1243年まで在位しました。初代セルビア王ステファン・ネマニッチの息子として生まれ、激動の時代を生き抜きました。

即位とブルガリアの影響

1230年、ブルガリア皇帝イヴァン・アセン2世がクロコトニツァの戦いでエピロス専制侯国に勝利すると、セルビア国内の貴族たちは当時の王ステファン・ラドスラヴへの支持を失います。ラドスラヴは弟のヴラディスラヴに助けを求め、1234年にラドスラヴは廃位、ヴラディスラヴが王位に就きました。

即位後、ヴラディスラヴはイヴァン・アセン2世の娘ベロスラヴァを妻に迎え、ブルガリアがセルビア国内で強い影響力を持つようになります。王国の東部はブルガリアの支配下に入り、セルビアはブルガリアの影響下で政治を行うことになります。

大主教サヴァの死と遺体返還

セルビア大主教サヴァは、政権交代に賛同せずエルサレム巡礼の旅に出ますが、帰国することなく1236年にタルノヴォで亡くなります。叔父サヴァの死によって不安定な立場に置かれたヴラディスラヴは、義父イヴァン・アセン2世にサヴァの遺体の引き渡しを要請します。交渉は難航しますが、最終的に遺体はセルビアに返還され、1237年にタルノヴォからプリイェポリェのミレシェヴァ修道院に移送されました。

モンゴルの侵攻と失墜

ヴラディスラヴの在位中、東方からモンゴル帝国がヨーロッパ遠征を開始し、1241年にはモンゴル軍がセルビアに侵攻します。モンゴル軍の侵入は短期間でセルビアへの損害はわずかでしたが、ブルガリアに混乱を引き起こしました。1241年6月にイヴァン・アセン2世が亡くなるとブルガリアの状況はさらに悪化し、ブルガリアがモンゴルの臣従国となったことでヴラディスラヴの信望は低下、セルビア貴族は再び反抗の姿勢を見せ始めます。

1243年、ヴラディスラヴは廃位され、異母弟のステファン・ウロシュ1世が貴族たちによって擁立されました。ヴラディスラヴはステファン・ウロシュ1世からゼタの統治を委ねられ、退位後も中央政府で一定の発言力を持っていたとされています。

1264年にヴラディスラヴは没し、ミレシェヴァ修道院に埋葬されました。

家族

ヴラディスラヴはベロスラヴァとの間に3人の子供をもうけました。

ステファン
デサ
* 娘

セルビア国旗

セルビア国旗に関する記録で最も古い記述は、1281年にラグーザ共和国が保管していたセルビア国旗についてのものです。その旗はステファン・ヴラディスラヴの宝物庫に置かれていたもので、記録に残る旗の色は赤と青（"vexillum unum de zendato rubeo et blavo"）、絹のような光沢がありました。旗の色がどのような意味を持っていたのかは不明ですが、ヴラディスラヴの統治期間と没年から推定すると、国旗は13世紀半ばから使用されていたと考えられています。

現在、セルビアでの中世の出来事を記念する祝典では、しばしば13世紀当時の国旗が使用されています。

ステファン・ヴラディスラヴの治世は、周辺国の影響、モンゴルの侵攻、そして国内の権力闘争が複雑に絡み合った時代でした。彼の生涯は、中世セルビアの歴史を理解する上で重要な手がかりとなります。

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