ステープ・トゥアクスパン

ステープ・トゥアクスパン：タイの政治家、その経歴と影響

ステープ・トゥアクスパン（Suthep Thaugsuban）は、1949年7月7日生まれ。タイの政治において重要な役割を果たしてきた人物です。元副首相であり、人民代表院議員を10期務めました。彼の政治キャリアは、タイの現代政治の変遷と深く関わっています。

生い立ちと初期のキャリア

ステープはタイ南部のスラートターニー県出身。チェンマイ大学で政治学を学んだ後、アメリカのミドルテネシー州立大学で政治学修士を取得しました。帰国後、彼は家業を継ぐのではなく、政治の世界へ足を踏み入れます。26歳で村長に選出されたことが、彼の政治家としての第一歩でした。

国会議員として

1979年、ステープはタイ民主党から下院議員選挙に出馬し、初当選。その後、9回連続で当選を果たし、農相や運輸相などの要職を歴任しました。2005年からは民主党の幹事長を務め、2008年からはアピシット・ウェーチャチーワ政権で副首相として治安を担当しました。

物議を醸した政策と行動

アピシット政権下でのステープは、強硬な姿勢で知られています。国内の政治的混乱を背景に、国粋主義的な外交政策を推進。2011年には領土問題を抱えるカンボジアへの攻撃を強行し、武力紛争を引き起こしました。この紛争では、双方の兵士や住民に多数の死傷者が出ています。

また、政権批判を国王への反逆とみなし、国家警察や国軍を動員して言論統制を行いました。これらの強硬な政策は、国内外から多くの批判を浴びました。

反政府デモと武力鎮圧

2010年、ステープはタクシン元首相派の反独裁民主戦線（UDD）による大規模なデモに対し、治安担当の最高責任者として国軍を投入し、武力鎮圧を指揮しました。この際、ロイター通信のカメラマンを含む多数の市民が死亡、負傷しました。この事件は、タイの政治史における暗い影として残っています。

2013年、ステープは下院議員を辞職し、インラック首相の退陣を求める反政府デモを開始。民主党人民民主改革委員会（PDRC）の委員長として、デモ隊を率いました。このデモは、タイの政治をさらに混乱させ、裁判所はステープに対する逮捕状を発行する事態となりました。

クーデター後の動向と主張

2014年の軍事クーデター後、ステープは一時拘束されましたが、その後出家。2017年に還俗し、財団を設立しました。彼は、この財団を通じて平和的な改革を訴えるとしていますが、軍政からは警戒されています。

ステープは議会制民主主義を否定し、民主党の一党独裁による「人民評議会」や、利益団体の代表による「人民議会」の設置を主張しています。この主張は、国際社会からファシズムであるとの批判を受けています。

人物像と評価

ステープ・トゥアクスパンは、タクシン元首相派の民主化勢力には妥協しない強硬派として知られています。過去には汚職疑惑も浮上しており、1995年には土地改革をめぐる不正行為が発覚し、政権崩壊の一因となりました。

ステープの政治 करियरは、タイの政治における権力闘争、民主主義の危機、そして社会の分断を象徴しています。彼の行動は、多くの議論を呼び、タイ社会に深い爪痕を残しました。

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