反独裁民主戦線

反独裁民主戦線（UDD）とは

反独裁民主戦線（はんどくさいみんしゅせんせん、United Front of Democracy Against Dictatorship：UDD）は、タイ王国の政治団体です。前身は反独裁民主同盟（DAAD）で、現在もこの名称で呼ばれることがあります。また、「スアデーン」（赤シャツ隊）とも呼ばれます。

UDDは、2006年の軍事クーデターで失脚したタクシン・シナワット元首相の支持者を中心に構成されています。そのため、タクシン派と呼ばれることもあります。タイ国旗の赤色をシンボルカラーとし、デモ活動では赤い服を着用する参加者が多いことから、「赤シャツ隊」や「赤服軍団」という通称でも知られています。

組織の目的と支持層

UDDは、クーデターの背後にいるとされる枢密院議長のプレーム・ティンスーラーノンや、クーデター後に暫定首相を務めたスラユット・チュラーノンら「軍部や官界を基盤としたエリート層」が国政を支配する体制を打破し、議会解散と選挙の実施を通じて民主主義を確立することを目指しています。UDDの支持基盤は、タクシン元首相の出身地であるタイ北部や、貧困層の多いタイ東北部に多く、農民や低所得者層からの支持が厚いです。

メディア戦略

UDDは、反対勢力である民主市民連合のメディアに対抗するため、独自にテレビ、ラジオ放送、雑誌発行などのメディア活動を展開しています。系列新聞としてタイ・レッドニュースがあります。

組織の内部事情

2010年時点でのUDD内部は、多様な意見が存在し、分裂や自称・他称の「赤服」が存在するなど、複雑な状況でした。また、本来は非暴力主義を掲げているものの、過激な行動に出る参加者もおり、組織としての統制が難しい側面もありました。活動資金は、タクシン元首相からの支援を受けていることが、幹部によって認められています。

デモ活動の展開

2006年〜2009年のデモ活動

2007年、憲法裁判所がタクシン政権下の与党であったタイ愛国党を解党したことをきっかけに、UDDのデモ活動は活発化しました。2008年には、タクシン派のサマック・スントラウェートが首相に就任したことで活動は一時沈静化しましたが、反タクシン派のデモに対抗して活動を再開しました。同年、民主市民連合との衝突で死傷者を出す事件も発生しています。

2008年末には、アピシット・ウェーチャチーワ首相の退陣と選挙実施を求め、大規模なデモ活動を展開し、2009年には首相府を包囲しました。

2009年3月末からのデモ活動

2009年3月末以降も、UDDは首相退陣、解散総選挙、司法の二重基準解消を求め、反政府デモを繰り返しました。首相府の包囲、アピシット首相の車列襲撃、主要道路の封鎖、ASEAN関連会議の中止など、過激な行動も目立ちました。治安部隊との衝突で死傷者を出し、一時的にデモ活動を停止しましたが、2010年以降も同様の要求を掲げ、デモを継続しました。

2010年3月からのデモ活動

2010年3月には、大規模な反政府集会を開催し、タクシン元首相もビデオ演説で政府を批判しました。デモ参加者は、首相府前や首相宅に血液を撒き散らすなど、過激な抗議活動を行いました。また、デモ参加者と治安部隊の衝突により、多くの死傷者が出ています。政府は非常事態宣言を発令し、最終的に軍による強制排除が行われ、多くのデモ参加者が逮捕されました。この一連のデモ活動では、91人が死亡し、1400人以上が負傷しました。

2011年以降のデモ活動

UDDは、2011年以降も、前年と同様の要求を掲げてデモを行いましたが、7月の下院総選挙でタイ貢献党が勝利したことで活動は沈静化しました。その後も、タクシン元首相の追放記念日やデモ終結記念日に集会を開催しています。

2014年以降のデモ活動

2014年、インラック・シナワット首相が失職したことを受け、UDDは抗議デモを開始しました。しかし、軍によるクーデターが発生し、UDD幹部が拘束されたため、デモ活動は激化しました。現在でも、UDDの抗議デモは継続されています。

参考文献

三菱東京UFJ銀行企画部経済調査室「タイにおけるアピシット政権の発足と課題」 (PDF) 『経済レビュー』平成21年（2009年）1月15日 NO.2009-3
日本貿易振興機構（ジェトロ）「緊急特集　タイ情勢：反政府デモの影響」
タイの地元新聞を読む - GFDLにて書かれているブログ。

外部リンク

UDD Thailand - 反独裁民主戦線（英語）（タイ語）

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