ストーナー63

ストーナー63：多機能性を追求したモジュラー式銃器

ストーナー63（Stoner 63）は、ユージン・ストーナーによって1960年代初頭に設計された革新的な銃器システムです。この銃は、単一の機関部を基盤とし、部品を交換することでアサルトライフル、カービン、軽機関銃、中機関銃など、様々な形態に変化させることができました。キャデラック・ゲージ社によって製造され、ベトナム戦争中にアメリカ海兵隊やNavy SEALsによって限定的に使用されました。

開発の背景

ユージン・ストーナーは、AR-15（M16）やAR-10の開発責任者としても知られています。アーマライト社を退社後、彼は共通の機関部に交換可能なコンポーネントを取り付けることで、様々な役割を果たすことができる銃器のコンセプトを考案しました。このコンセプトに基づき、ストーナーはキャデラック・ゲージ社のハワード・カーソンの協力を得て、新しい銃器システムの開発に着手しました。

ストーナーは、まず7.62x51mm NATO弾を使用するM69Wを試作し、次に量産を意識したストーナー62を設計しました。その後、アメリカ陸軍が採用したM193弾（.223レミントン弾）を使用するストーナー63を開発しました。1963年2月には、最初のストーナー63が製造されました。

トライアルと改良

1963年、国防高等研究計画局（DARPA）は、様々な形態のストーナー63を25丁発注しました。同年8月から9月にかけて、海兵隊で性能評価が行われ、軽量さと小口径弾による携行弾数の増加が評価されました。しかし、陸軍の試験では、M193弾ではガス圧不足が発生し、信頼性が低いと判断されました。そのため、陸軍はステンレス製のガスシリンダーや安全装置の改良を要求し、改良型としてストーナー63Aが1966年から生産されました。

配備と運用

開発初期の試作型ストーナー63は、東南アジアに展開するSEALsに採用されました。1967年には、海兵隊で実戦試験が行われ、小銃型（XM22, XM22E1）やカービン型（XM23）が配備されました。また、軽機関銃型（LMG）と中機関銃型（MMG）も使用されました。オランダのNWM社も製造権を取得しましたが、輸出先を確保できず生産は中止されました。1970年には、アメリカ陸軍がLMG型をXM207として実戦試験を行いましたが、構造の複雑さから1971年に採用計画が撤回されました。キャデラック・ゲージ社は、ストーナー63の生産を1970年に終了しましたが、SEALsではコマンドー型をMk 23 Mod 0機関銃として制式採用しました。

ストーナー63のバリエーション

ストーナー63は、コンポーネントの組み合わせにより15種類の派生型が存在しました。主なバリエーションは以下の通りです。

ストーナー63/63Aライフル: 標準的な突撃銃型で、30発箱型弾倉を使用しました。
ストーナー63/63Aカービン: ライフル型を短縮したモデルで、折畳式銃床を備えていました。
ストーナー63/63Aライトマシンガン: ドラム型弾倉を使用する軽機関銃型で、銃の右側面から装填しました。
ストーナー63/63Aオートマチックライフル: 箱型弾倉を使用する軽機関銃型で、フルオート射撃のみが可能でした。
ストーナー63/63Aミディアムマシンガン: ライトマシンガン型を三脚に取り付けたモデルです。
ストーナー63/63Aフィクスドマシンガン: 車載機関銃として提案されたモデルです。
ストーナー63/63Aコマンドー: ライトマシンガン型を分隊支援火器化したモデルです。
ストーナー63サバイバルライフル: 航空機に搭載するサバイバルライフルとして設計されたモデルです。

ストーナー63の遺産

ストーナー63は、そのモジュラー設計により、様々な戦術的ニーズに対応できる汎用性の高い銃器でした。しかし、その複雑さと信頼性の問題から、大規模な採用には至りませんでした。しかし、この銃の革新的なコンセプトは、後の銃器開発に大きな影響を与えました。ロビンソン・アーマメント社が開発したM96は、ストーナー63の設計思想を受け継いだ民生用半自動小銃として知られています。

ストーナー63は、その特異な設計思想と、ベトナム戦争での限定的な運用という歴史的背景から、銃器愛好家や軍事史研究者の間で今もなお注目を集めています。

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