AR-10

AR-10は、ユージン・ストーナーによって開発された7.62mm口径のガス圧作動式自動小銃です。この銃は、後のアメリカ軍制式小銃M16の始祖であり、その設計思想はM16にも受け継がれています。AR-10は、発射ガスの一部を利用してボルトを作動させるガス圧作動方式を採用しており、直線的な銃床、アルミ合金製のレシーバー、強化グラスファイバー製のハンドガードなどの特徴を備えています。

概要

AR-10は、その先進的な外観と軽量さで、当時の他の自動小銃とは一線を画していました。1956年の発表時には、同時代の歩兵装備と比較して約1kgも軽量であり、フルオート射撃の容易さ、セミオート射撃での高い精度、そして取り回しの良さから、画期的な銃器として注目されました。しかし、総生産数は約1万丁と限られています。

デザイン

AR-10の基本構造は、アーマライト社の銃工ユージン・ストーナーによって開発されました。この銃の画期的な特徴は、後のM16にも引き継がれることになります。AR-10は、独自設計でありながら、既存の銃器のシステムも取り入れています。例えば、レシーバーはFN FALと同様にヒンジで固定されており、メンテナンスが容易です。また、ボルトのロック機構はM1941ジョンソンライフルのものに類似しています。銃床を直線的にすることで、フルオート射撃時のマズルジャンプを抑制し、安定した射撃を実現しました。軽量化と射撃安定性を両立させるため、ボルトキャリアの後退衝撃を緩和するバッファーユニットが銃床に内蔵されています。

当時、航空機メーカーだったフェアチャイルドは、プラスチック、アルミニウム、チタン合金などの素材に精通しており、これらの素材を銃器に採用しました。AR-10のボルトの閉鎖機構とガス圧作動方式は、ロータリーボルトとマイクロ・ロッキング・ラグ閉鎖、そして発射ガスをボルトに直接導く方式を採用しています。直線的な銃床の配置により、射撃時の安定性が向上していますが、頬付けした際の目線が銃身よりも数センチ上になるため、キャリングハンドルにリアサイトが取り付けられました。レシーバーは軽量化のためにアルミ合金削り出しで製造され、ボルトはレシーバーではなく、銃身後端と噛み合ってロックされるため、レシーバーの軽量化に貢献しています。初期のプロトタイプではアルミ製銃身が使用されましたが、後にスチール製の銃身に変更されました。ストック、ハンドガード、ピストルグリップは、プラスチックとグラスファイバーの混合素材で製造されています。

歴史

アーマライトは、フェアチャイルド社の部門として1954年に設立されました。アメリカ軍では、老朽化したM1ガーランドライフルの後継となる銃の選定が進められていました。スプリングフィールド造兵廠のT44E4とT44E5、そしてFNハースタルのFN FAL（T48）がトライアルに提出される中、アーマライトはAR-10を1956年秋に提出しました。AR-10は、テスト要員から高い評価を得ましたが、社長の指示によりアルミ合金バレルを使用していたため、耐久テスト中にバレルが破損し、採用は見送られ、T44がM14として採用されました。

1957年、フェアチャイルドアーマライトは、AR-10の製造権をオランダのアーティラリエ・インリッチンゲン社に譲渡しました。AR-10は、射撃銃、カービン銃、試験銃、分隊支援火器など、様々なモデルが製造されました。特に、スーダンモデルは軽量で、調整式のガスレギュレーターを備えていました。AR-10は、スーダン、ポルトガル、グアテマラ、ビルマ、イタリア、キューバなどで使用され、特にスーダンではゲリラ部隊や隣国との戦闘で使用されました。鹵獲されたAR-10は、アフリカ諸国で非制式ライフルとして採用され、1985年までスーダン特殊部隊で使用されました。

1958年には、7.62x39mm弾を使用するAR-10がフィンランドとドイツで試験的に製造されました。イタリア海軍は潜水部隊でAR-10を採用し、オーストリア、オランダ、南アフリカもAR-10を少数購入しました。また、キューバのバティスタ政権が100丁のAR-10を購入し、鹵獲されたAR-10はカストロやゲバラによって試射され、その破壊力に驚いたと伝えられています。ポルトガルモデルは、主にポルトガル空軍に販売され、アンゴラやモザンビークでの戦闘で使用されました。ポルトガルでは、その高い精度と信頼性が評価され、一部は光学サイトを装着し、狙撃銃としても使用されました。

オランダのAI社は、AR-10の禁輸を発表し、ポルトガルへの輸出も停止されたため、ポルトガル軍はH&KのG3アサルトライフルを採用しました。1958年、アーマライトはAR-10を基に5.56mm口径のAR-15を開発しましたが、AR-10aの販売は不調に終わりました。1959年、アーマライトはAR-10aとAR-15の製造権をコルトに売却しました。

1960年までに、オランダのAI社はAR-10の製造を終了し、約1万丁が製造されました。その後、アーマライトは、AR-10の設計をベースに、7.62mmのAR-16を開発し、AR-18は各社で少量生産され、その作動方式は後のアサルトライフルに影響を与えました。しかし、1970年までにアーマライトは全ての火器開発を中止しました。

後に、スーダンとポルトガルで使用されたAR-10が、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの民間市場に流入しました。オーストラリアでは、1997年の銃規制により、2,500丁のAR-10が回収され廃棄されました。アメリカに輸入されたAR-10は、パーツとして輸入され、民生用の火器として合法的に改造されました。

アーマライトの復活

1995年、マーク・ウェストロンがアーマライトを買収し、アーマライト・インクとして再編しました。その後、現代版のAR-10（AR-10A2）が開発され、AR-15A2を基に7.62x51mm NATO弾を使用する銃となりました。このAR-10は、カービンモデル、射撃用モデル、そして派生型が開発されています。

日本では、現代版のAR-10セミオートモデルが狩猟用途で所持許可されています。AR-10A2、AR-10A4、AR-10Tの3モデルが輸入販売されましたが、外観の印象から猟銃としての適正が疑問視され、新規の所持許可は事実上不可能となっています。

新たなAR-10

アーマライトのAR-10A2開発後、新型のAR-10は登場しませんでしたが、20世紀末から米軍が中東での戦闘で5.56mm弾の威力不足を痛感し、M14を復活させたことで、一部メーカーは7.62x51mm NATO弾を使用するM16の開発に着手しました。その結果、ナイツ・アーマメント社のSR-25、H&K社のHK417、オーバーランド・アームズ社のOA-10などが開発され、近年、AR-10は進化を遂げています。

イギリス陸軍は、ルイス・マシン＆ツールのLM308MWSをL129A1として正式採用しています。この銃は、全長945mm、重量約5kg、20発マガジンを備え、各種サイズのバレルに変更可能で、ピカティニーレールを標準装備し、暗視ゴーグルやフォアグリップなどを装着できます。

登場作品

映画
『スーパーマンII』

ドラマ
『ザ・ユニット米軍極秘部隊』
『特捜班CI-5』

アニメ
『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』

ゲーム
『Project Reality（BF2）』
『メタルスラッグ』

外部リンク

アーマライト社の公式サイト（英語）
オーバーランド・アームズ社の公式サイト OA-10
* LWRC社SABR紹介サイト

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