スナフキンの手紙

『スナフキンの手紙』

鴻上尚史の戯曲『スナフキンの手紙』は、1995年度第39回岸田國士戯曲賞を受賞した作品です。初演は1994年7月、鴻上自身が監督を務める劇団・第三舞台により、東京都の天王洲アートスフィアと近鉄劇場で行われました。

概要

この戯曲は1960年代に連合赤軍の革命が成功したというフィクションに基づき、1990年代の日本を舞台としています。設定されたこの日本では、さまざまな集団が互いに利害を巡って対立を繰り広げ、抗争が絶えません。登場するのは、「在日外国人同盟」や「おたく主義者同盟」、さらには「帰国子女戦線」「花嫁戦線平凡派」といった多様なグループです。

登場人物と葛藤

劇は、政府軍の長官、後藤田を中心に展開します。彼には上司や部下が存在し、さらにはゲリラ的な活動を行うアイドルやそのマネージャー、それに自殺コンサルタントなど、個性的なキャラクターたちが絡み合います。政府はこれらの集団を取り締まろうとしますが、潜入捜査が進む中で後藤田たち自身も実はさまざまな集団に属していることが次第に明らかになっていき、展開はドタバタ劇へと移行します。

50代の人々が集うこの作品は、得るものと失うもの、語られない言葉として内心に秘めた感情が、どのようにぶつかり合うのかを描いています。この戯曲が展開される中でのコミュニケーションの難しさや、真の意思の表明がいかに困難であるかがテーマに据えられています。

執筆の背景

鴻上は、この作品の構築に至る背景として、ある雑誌に連載した企画を挙げています。「読者の出せなかったラブレターを供養する」というこの企画に寄せられた膨大なラブレターを読みながら、彼は「そう簡単に『語られない言葉』を作ってどうするのだろうか」と考えるようになったのです。この考えに至ったことで、彼は「真の『語られない言葉』は、戦いの後にこそ生まれる」という思いから本作を執筆しました。

かつての作品との関係

また、この戯曲は2001年に上演される『ファントム・ペイン』の続編として位置づけられています。ここでも、登場人物たちがどのように成長し、変化していくのかが描かれることになるでしょう。

結論

『スナフキンの手紙』は、利害が交錯する社会に生きる人々のあり方を深く掘り下げ、彼らが直面する自己の内面と対話する様を描いた意義深い戯曲です。鴻上尚史によるこの作品は、現代の喧騒の中で、私たちが本当に伝えたいことを見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。

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