スネクマ アター

スネクマ アター（SNECMA Atar）

スネクマ アター（SNECMA Atar）は、フランスで開発された軸流式ターボジェットエンジンです。第二次世界大戦中にドイツで開発されたBMW 003をベースに、より高出力化を図ったエンジンとして知られています。

概要

アターは、戦後のフランスにおける航空機開発に広く採用され、フランスの航空機産業、特にジェットエンジン技術の基盤を確立する上で重要な役割を果たしました。その開発の経緯と技術的な特徴を見ていきましょう。

開発の経緯

第二次世界大戦終結後、フランスはドイツから接収したBMW 003エンジンと、その開発に携わった技術者たちを活用し、自国のジェットエンジン開発をスタートさせました。BMW 003の開発チームを率いたヘルマン・エストリッヒ技師は、戦後フランスの占領地域に設立されたリッケンバッハ航空技術作業所（アター）に招聘され、BMW 003をベースにした新型エンジンの開発に着手しました。

こうして誕生したのがアター101です。アター101は、BMW 003の設計を基にしつつ、より大型で高出力なエンジンを目指して設計されました。1948年には最初のエンジンが完成し、テスト運転が行われました。

技術的な特徴

アターエンジンの初期モデルであるアター101は、アルミニウム合金製のブレードをアルミニウム製の回転子に植えつけた7段式の軸流式圧縮機を備えていました。また、エンジン前方に補機部分が分離して設置されている点も特徴的です。燃焼器は鋼製の缶で構成された12個のカンニュラー式燃焼室を持ち、単段のタービンを回転させます。

その後の改良により、アター8や9などの派生型が開発されました。これらのモデルでは、圧縮機が9段式に変更され、タービンも2段式になるなど、性能向上が図られました。

バリエーション

アターエンジンには、数多くのバリエーションが存在します。

アター101：初期のモデル。シュペルミステール戦闘爆撃機に搭載されました。
アター8：2段タービンを採用したモデル。エタンダールIVに搭載されました。
アター9：アフターバーナーを搭載し、超音速飛行に対応したモデル。ミラージュIIIやミラージュ5戦闘機に搭載されました。
アター9K-50：アター9Cを改良し、燃料消費率と推力を向上させたモデル。ミラージュF1やミラージュ50に搭載されました。

搭載機

アターエンジンは、以下のような航空機に搭載されました。

シュペルミステール
ミラージュIII
ミラージュIV
ミラージュ5
ミラージュF1
エタンダールIV
シュペルエタンダール

スペック (アター9C)

形式：アフターバーナー付きターボジェット
全長：5,900mm
直径：1,000mm
乾燥重量：1,456kg
圧縮機：9段軸流式
タービン：2段
推力：
42.0kN（ミリタリーパワー）
58.9kN（アフターバーナー使用時）

まとめ

スネクマ アターは、戦後のフランス航空機産業の発展に大きく貢献したターボジェットエンジンです。その開発の経緯と技術的な特徴は、航空史における重要なトピックの一つと言えるでしょう。

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