スバル・アルシオーネ

アルシオーネ (ALCYONE)

アルシオーネは、1985年から1991年まで富士重工業（現在のSUBARU）によって製造されたクーペ型乗用車です。このモデルは、「4WDアヴァンギャルド」や「オトナアヴァンギャルド」といったキャッチコピーで知られており、リトラクタブル・ヘッドライトが搭載された唯一の車種としても特徴的です。

概要

アルシオーネは1985年1月に「XT」としてデトロイト・モーターショーで初公開されました。この発表に際しては、世界各国からモータージャーナリストを招いた試乗会や、ハリウッド映画への登場などが行われ、富士重工業がアメリカ市場に大きな期待を寄せていたことが伺えます。モデルは発売当初はアメリカ市場で好調な売上を記録しましたが、同年9月に発生したプラザ合意による急激な円高の影響で急速に販売が下降。その対策として6気筒の「XT6」が企画されましたが、方向性の変更が市場で受け入れられず、1991年には販売を終了しました。

日本国内ではアルシオーネは1985年6月8日に発売され、当初のデザインや価格帯が市場に馴染まず、販売は振るわなかったとされています。また、欧州市場およびオーストラリアでは「ボルテックス」としても販売されました。

メカニズム

メカニズムの点において、アルシオーネは油圧多板クラッチに専用のコントロールユニットを組み合わせた「ACT-4」を採用し、前後の駆動トルクを自動的に調整しました。また、オートマチックトランスミッションの4速化や、電動モーターによるパワーステアリング、ABSが標準装備されており、先進的な安全性の面でも高く評価されています。

エクステリアデザイン

アルシオーネのエクステリアは、リトラクタブルヘッドライトを備えたくさび形のスタイリングが特徴で、空気抵抗の低減に取り組んだ設計が施されています。初の日本車としてCD値0.30を達成し、CD×Aという空気抵抗性能指標で優れた数値を示しています。特に前後のウィンドウの傾斜や、ボディデザインは徹底的な空力性能を追求した結果となりました。見た目の斬新さの裏にある技術的なこだわりが、多くの支持を集める要因となっています。

インテリアと快適性

内装には当時のスペシャリティ・クーペとしての特徴が満載です。運転席のドライビングポジションは低く、センターコンソールも高めに設定されており、各種スイッチが直感的に操作できるように配置されています。また、液晶式デジタルメーターや豊富なオーディオ機能も搭載され、フラッグシップモデルに相応しい装備が整っていました。

エンジンとドライブトレイン

アルシオーネは水平対向4気筒エンジンを搭載し、ターボモデルでは高い出力が発揮されました。特に2.7VXモデルでは、専用設計となる6気筒エンジンが搭載され、パワフルなドライビングが楽しめました。AWDシステムは当時としては革新的なもので、自動的にトルク配分を調整する機能が搭載され、操縦性や安定性が向上しました。

シャシーとサスペンション

アルシオーネのシャシーは、レオーネをベースにしたものでありながら、特定のモデルにはエアサスペンションが装備され、さらなる快適性が追求されています。このシステムによって、車高が自動調整され、運転時の安定性が大幅に向上しました。

歴史と影響

1985年から1991年までの数年間にわたるアルシオーネの歴史は、富士重工業にとっての重要なマイルストーンの一つと言えるでしょう。市場の反発や価格競争の厳しさを経て、後のSVXモデルに繋がる道筋が構築されました。アルシオーネは、その独特なスタイリングや技術的革新により、今なお多くの自動車ファンの記憶に残る存在です。

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