スバル・トラヴィック

トラヴィック（TRAVIQ）

トラヴィックは、ゼネラルモーターズ（GM）の傘下にあるオペルが開発した7人乗りミニバンです。日本国内では富士重工業、現在のSUBARUが販売を手がけていました。この車両は、2001年8月に初代XM型として市場に登場しました。

初代XM型の概要

トラヴィックは、実はスバルにとって初の本格的なミニバンでしたが、自社で展開していたリッターカークラスのワンボックスカー「ドミンゴ」が過去に販売されていたため、全く新しいタイプのクルマというわけではありませんでした。トラヴィックは、GMと提携関係にあった富士重工業がドイツのオペルからOEM供給を受けて作られました。特筆すべきは、製造がドイツではなくタイ工場で行われていた点です。これにより、コストを抑えつつも品質の高いモデルが提供されました。

エンジンは、日本で輸入されたオペルのザフィーラのものよりも大きい2,198ccを搭載しています。また、オーストラリアのホールデン社から技術支援を受け、スバルの技術者が車両特性の確認を行いました。

市場での動向

トラヴィックの登場は、GMの戦略としてアジア市場に低価格で展開する計画の一環でした。しかし、オペルブランドに対する信頼性の低さや再販価値の不透明さが次第に浸透し、販売開始から早々に逆風にさらされました。その結果、トラヴィックはザフィーラや他のオペル車と共に販売不振に苦しむことになり、最終的にはオペルブランドの日本市場撤退の要因にもなったとされています。

トラヴィックはザフィーラと多くの共有部分を持ちながら、タイでの生産によるコストメリットを活かし、優れたコストパフォーマンスを実現しました。エンジン性能や装備内容も充実しており、高速走行においても安定した性能が保証されていました。特に7人乗車時でも170km/hでの巡航が可能な設計思想には驚かされます。

安全性と走行性能

トラヴィックは、全車にトラクションコントロールやEBD機能付きABSを標準装備しており、安全性を重視した設計が際立っています。また、操縦安定性を高めるためにサスペンションのチューニングが行われており、当時の他のミニバンとは一線を画していました。

内装の設計はシンプルさを追求しており、過剰な品質や不要なシートアレンジを省いた分、機能性と安全性を重視したことが高く評価されました。特に、ダイヤル式無段階調整リクライニング機構は日本のミニバンではあまり見られない意欲的な取り組みでした。

グレードと装備

トラヴィックはデビュー当初、Lパッケージ、Sパッケージ、標準パッケージの3つのグレードが用意されていました。それぞれのパッケージには異なる特徴があり、Lパッケージには安全関連装備が充実している一方で、Sパッケージではスポーティな足回りと豪華な内装が魅力でした。標準パッケージは基本装備が少ないものの、コストを抑えたバランスの良いグレードでした。

生産終了と累計販売台数

2004年12月、GMタイ工場でのザフィーラ生産中止に伴い、トラヴィックの製造も終了しました。販売は2005年3月末まで行われ、累計で約12,000台が販売されました。その後、スバルは独自開発のミニバン「エクシーガ」を2008年に発売するまで、ミニバンをラインナップから外すことになりました。

車名の由来

トラヴィックの名前は、「TRAVEL（旅行する）」、「QUICK（速い）」という2つの英単語を組み合わせた造語です。この命名の背景には、スバルが提供する移動手段としての期待が込められています。

トラヴィックは、特異な経歴を持つミニバンとして、車両設計や安全性能において高い評価を受けている一台です。

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