リッターカー

リッターカー：日本の自動車史における重要な存在

1970年代後半、日本において、自動車排出ガス規制の強化という大きな転換期がありました。それまで大衆車は排気量や車体サイズが大きくなる傾向にありましたが、この規制をきっかけに、小型で経済的な自動車への需要が高まりました。この時代の変化の中で生まれたのが「リッターカー」です。

リッターカーとは、排気量1000ccクラスの小型乗用車を指す言葉で、和製英語です。現在では「コンパクトカー」や「スモールカー」、あるいは欧州の自動車分類である「Aセグメント」といった言葉も広く使われています。

ダイハツ・シャレード：リッターカーの幕開け

リッターカーの代表的な車種として、ダイハツ工業が1977年に発売した「シャレード」があります。シャレードは、当時としては非常に小さく簡素な車体とエンジンを組み合わせることで、経済性と環境への配慮を両立した画期的なモデルでした。その開発思想は自動車評論家から高い評価を受け、市場でも大きな成功を収めました。シャレードのエンジン排気量が1000ccだったことから「リッターカー」という言葉が生まれ、多くの自動車メーカーがこのカテゴリーへの参入を検討するようになりました。なお、シャレードのキャッチコピーは「5ヘーベカー（5m2カー）」であり、リッターカーという表現はマスコミによって生まれた造語であると考えられています。

主要なリッターカー

1970年代後半以降、日本市場で販売されたリッターカーには、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、スズキ、スバル、三菱自動車工業など、多くのメーカーから様々な車種がラインナップされました。例えば、ダイハツ工業はシャレードの他、YRV、ミラジーノ1000、ストーリア、ブーン、トールなど、トヨタ自動車はヴィッツ（ヤリス）、パッソなど、数多くのリッターカーを世に送り出しました。

これらの車種は、1000ccエンジンを搭載したモデルが中心でしたが、一部の車種では1300ccエンジン搭載モデルも存在しました。また、エンジン形式も3気筒や4気筒など様々であり、メーカーや車種によって特徴が異なります。

欧州市場とリッターカー

欧州市場では、リッターカーに相当するAセグメント車が、大衆車として広く普及しています。しかし、日本では、税制上の優遇措置のある軽自動車というカテゴリーが存在するため、リッターカーは中途半端な存在として捉えられる傾向がありました。にも関わらず、欧州市場への進出を視野に入れた日本の自動車メーカーにとって、リッターカーの開発は重要な戦略課題となっています。

トヨタ自動車が開発した初代ヴィッツ（欧州名ヤリス）は、それまで弱いとされていた欧州市場への本格的な進出を意図したモデルであり、そのコンパクトなサイズと1Lエンジンは、この戦略を象徴しています。さらに、トヨタはアイゴやiQといった、より小型の1Lエンジン搭載車をラインアップに加え、リッターカー市場への取り組みを強化しました。

軽自動車との関係

日本の自動車メーカーの中には、軽自動車をベースにエンジンを交換するなどの改造を加え、リッターカーを開発するケースもありました。これは日本の競争が激しく、開発コストを抑えるための工夫と言えます。こうしたリッターカーは、欧州市場への輸出や新興国市場への展開において、重要な役割を果たしました。

まとめ

リッターカーは、日本の自動車産業において、排出ガス規制への対応や経済性の向上、そしてグローバル市場への進出という、重要な役割を果たしてきました。現在でも、コンパクトカーやスモールカーという形で進化を続け、自動車市場において重要な存在であり続けています。

もう一度検索