スパイラル (建築物)

スパイラル：アートと生活の交差点

スパイラルは、東京都港区南青山5丁目に位置する地上9階、地下2階建ての複合文化施設であり、建築家槇文彦によって設計されました。本施設の特徴的な要素は、1階奥に配置された吹抜けの螺旋スロープであり、この螺旋構造に由来してスパイラルという名前が付けられています。スパイラルの名付け親は、株式会社ワコールの代表取締役である塚本能交氏です。

概要

1985年10月にオープンしたスパイラルは、アートと日常生活の交わりをコンセプトにしています。内部にはギャラリーや多目的ホールに加えて、レストラン、バー、生活雑貨ショップ、トータル・ビューティ・サロンなどが揃っており、訪れる人々に多様な体験を提供しています。スパイラルでは、現代美術やデザインに関する展覧会、演劇やダンスの公演、コンサート、ファッションショー、シンポジウム、パーティなどといった、さまざまなアート・イベントが開催されており、それらは常に現代性を意識している点が特徴的です。

スパイラルは、秋葉台体育館や幕張メッセと並び、槇文彦が1980年代に手掛けた代表的な作品であり、日本のポスト・モダン建築を代表する一つとして国際的にも評価されています。特にそのファサードは、槇文彦の作品群の中でも最も複雑でありながらも、窓のプロポーションは他の作品と同様に彼の特徴が表れています。1階から3階にかけては、ユニークな構造によって、ギャラリーを見渡すカフェを経由し、ショップを通じて多目的ホール「スパイラルホール」へと繋がるオープンスペースが設けられています。このような構成は、訪れた人々に通常の美術館や劇場とは異なるアートとの出会いを体験する機会を提供します。また、地下1階には「青山CAY」というスペースが設けられ、コンサートやシンポジウムなどが行われています。

アートと歴史の融合

スパイラルが築かれた南青山5丁目は、江戸時代には青山百人町と呼ばれ、多くの御家人の屋敷が存在した地域です。この地には、幕末の蘭学者・高野長英の隠れ家があり、彼の終焉の地としても知られています。1963年には、この隠れ家を記念する碑が建てられ、スパイラルの建設時には表参道寄りの柱の内部に移設されました。これにより、スパイラルはアートの発信地であると同時に、歴史的な背景を持つ場ともなっています。

施設と運営

スパイラルは、株式会社ワコールアートセンターが運営しており、この企業は1985年に設立され、ワコールが100%出資する関連会社です。アートの事業化を目指し、さまざまな活動を通じて文化の発展に寄与しています。さらに、2022年度にはグッドデザイン賞を受賞し、その評価はますます高まっています。スパイラルは、ただの文化施設に留まらず、人々が集い、交流し、創造する場所として今日も多くの人々に愛されています。

もう一度検索