スパゲッティアイス

ドイツ生まれの遊び心あふれるデザート、「スパゲッティアイス（Spaghettieis）」は、その名の通り、まるで一皿のパスタのようなユニークな見た目が特徴的な氷菓子です。主にバニラアイスクリームを用いて作られ、専用の、あるいはシュペッツレ用のプレス機やポテトライサーなどを応用した器具に通すことで、細く長い麺のような形状に成形されます。この「アイス麺」は、ホイップクリームを敷き詰めたお皿の上に盛り付けられ、本物のパスタを模した盛り付けが完成します。

さらに、その見た目をより一層パスタらしく仕上げるための工夫が凝らされています。上からは鮮やかな赤色のストロベリーソースがたっぷりとかけられます。このソースは、あたかもトマトソースのような役割を果たし、視覚的な印象を強めます。トッピングも凝っており、パルミジャーノチーズに見立てて、ココナッツのフレークやすりおろしたアーモンド、細かく削ったホワイトチョコレートなどが振りかけられます。これにより、見た目はまさしく「アイスクリームでできたスパゲッティ・ボロネーゼ」となります。

基本形はストロベリーソースを用いたボロネーゼ風ですが、バリエーションも存在します。例えば、ダークチョコレートソースとナッツを組み合わせることで、カルボナーラのような雰囲気を醸し出すスタイルも見られ、提供する店舗によって様々なアレンジが楽しめます。

このユニークなデザートの誕生には、興味深い歴史があります。スパゲッティアイスを考案したのは、イタリア系のジェラートショップを営んでいたダリオ・フォンタネラ氏です。彼は1969年にドイツのマンハイムで、当時17歳で訪れたイタリアのコルティーナ・ダンペッツォで食べたモンブランにインスピレーションを受けて、このアイデアを思いついたとされています。彼は父親の店のジェラートを使い、シュペッツレ用のプレス機を改造して試作を始めました。

しかし、開発当初は試行錯誤の連続でした。最初にフォンタネラ氏が作ったものは、イタリア国旗の色を意識してストロベリー、レモン、ピスタチオのジェラートを使ったカラフルなスパゲッティアイスでした。これを見た父親からは、「色つきのスパゲッティなど見たことがない」「本物のパスタに似せるならバニラアイスを使いなさい」という厳しい、しかし的確なアドバイスを受けます。この助言を基に改良を重ね、バニラアイスを主体とし、ストロベリーソースとホワイトチョコレートを組み合わせる現在のボロネーゼ風スタイルが確立されたのです。

完成したスパゲッティアイスは、そのあまりにもリアルな見た目ゆえに、面白いエピソードも生み出しました。初めてこのデザートを目にした小さな子どもが、本物のスパゲッティと勘違いしてしまい、「アイスクリームが食べたかったのに」と泣き出してしまったという話は、その斬新さを物語っています。

フォンタネラ氏の功績は地元でも認められ、2014年にはマンハイム市から「Bloomaulorden」という名誉あるメダルが贈られました。

誕生以来、スパゲッティアイスは長らくドイツ国外ではあまり知られていない存在でした。その提供場所も、ドイツ国内の限られたジェラート店や特別なイベント、一部のホテルやレストランなどに限られていました。しかし、その斬新で写真映えする見た目が、特に2014年頃から注目を集めるようになります。インターネットの普及、とりわけソーシャルメディアを通じてそのユニークな姿が世界中に拡散され、ドイツ国外でも徐々にその知名度を高め、現在では多くの人に知られる個性的なデザートとして楽しまれています。

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