スパンタックス995便離陸失敗事故

スパンタックス995便離陸失敗事故

1982年9月13日に発生したスパンタックス995便離陸失敗事故は、航空史に残る悲劇的な事例の一つです。この事故は、スペインのマドリードからアメリカのジョン・F・ケネディ国際空港へ向かうチャーター便が、マラガ空港での離陸時に発生しました。乗員と乗客394人のうち、50人が不幸にも命を落としました。

事故の前提

スパンタックス995便は、マドリード＝バラハス空港を1982年9月13日の9時36分に離陸し、10時20分にマラガ空港に到着しました。マラガ空港からは251人の乗客を乗せて離陸に向けて滑走路14へ進んでいました。11時58分、離陸許可を受けた995便は、目標速度に向かって加速していきました。

しかし、V1速度である162ノット（約300 km/h）に達する直前、ノーズギアのトレッドでタイヤが剥がれる異常が発生しました。これにより機体は激しく振動しました。この振動の影響で、機長は離陸を判断する際に困難を感じ、離陸を中止する決断を下しました。当時の機体速度は184ノット（約341 km/h）だったため、滑走路の残りは4,250フィート（約1,300 m）ほどしかありませんでした。

離陸中止の試み

中止の際、機長は逆推力装置を使用して減速を試みましたが、思わぬトラブルが待ち受けていました。機長が第3エンジンのスロットルを誤って操作したため、推力が非対称となり、機体は制御を失い左に逸れて行きました。995便は110ノット（約200 km/h）で滑走路を越え、その際ILSアンテナに衝突し、第3エンジンが脱落しました。

事故の過程で機体はフェンスを突き破り、高速道路へ進入することになり、その結果、道路上の3台の車両を巻き込む大惨事となりました。最終的に機体は滑走路端から1,475フィート（約450 m）地点で停止しましたが、胴体後部は炎上しました。

事故の原因

調査委員会による調査の結果、ノーズギアの右車輪のトレッドが剥がれることが異常な振動の原因とされました。また、離陸速度を越えてからの離陸中止の判断が乗員の訓練不足に起因していたことも明らかになりました。離陸時のエンジン故障に対する対応は訓練されていましたが、タイヤの故障に対する適切な対応についてはほとんど訓練されておらず、結果として乗員は離陸中止が適当だと判断してしまったのです。

この事故は、航空業界における安全訓練の重要性や、機体の異常に対する迅速な判断力がいかに重要であるかを再認識させる事件となりました。スパンタックス995便の事故は、航空事故の原因を探るうえで必ず引き合いに出される事例となり、今後の安全運航に向けた情報共有や対応策の強化が求められる理由でもあります。

脚注

関連項目として、福岡空港ガルーダ航空機離陸事故も挙げられます。

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