スピード (チェーンストア)

「スピード」：関西圏で展開したディスカウントストアの軌跡

「スピード」は、株式会社やまやの完全子会社であるやまや関西が運営していた酒類・食品のディスカウントストアです。1999年1月に設立され、大阪府を中心に、関西圏で多くの店舗を展開しました。同社は、ディスカウントストア事業に加え、焼肉店やカフェレストラン、フレッシュジュース店といった多様な飲食事業も手掛けていました。

特に注目すべきは、大創産業との提携による「ザ・ダイソー」併設型店舗「ダイソー＆スピード」です。この戦略は、他社との差別化を図る上で大きな役割を果たしました。多くの店舗で「ダイソー＆スピード」を展開することで、顧客への利便性を高め、集客力の向上に繋がっていたと考えられます。

しかし、急激な店舗拡大は、企業にとって大きなリスクを伴いました。事業の急成長に伴い、資金繰りが悪化。2008年1月、大阪地方裁判所に民事再生法の適用を申請する事態に陥りました。同年11月には、やまやとの間で事業譲渡契約が締結され、翌2009年5月には吸収分割が実施されました。

その後も「スピード」ブランドはやまや関西の下で運営が続けられましたが、2010年には、民事再生法の適用を申請した株式会社前田を吸収合併した楽市株式会社に吸収合併。楽市株式会社は、やまや関西株式会社に商号変更されました。やまやがイオングループの一員であることから、一部店舗ではイオンのプライベートブランド「トップバリュ」の取り扱いも開始されました。

しかし、時代の変化や競争激化の中で、「スピード」ブランドの整理が進められました。「酒のやまや」への転換や店舗閉鎖が相次ぎ、2017年12月31日、大阪府枚方市にあった最後の「スピード」店舗であるスピード長尾谷店が閉店。これにより、「スピード」ブランドは完全に消滅しました。

「スピード」の設立から消滅までを振り返ると、急成長と経営危機、そしてブランドの終焉という、企業経営における様々な側面を垣間見ることができます。短期間での急激な成長が、企業の財務状況を圧迫し、最終的に事業の縮小・撤退に繋がったという、現代企業経営の典型的な事例と言えるでしょう。

沿革

1999年1月：株式会社スピード設立。兵庫県宝塚市に1号店開店。
2004年11月：大阪府枚方市にスピード長尾谷店開店（後に最後の店舗となる）。
2006年：焼肉店、カフェ&フレッシュジュース店などを展開開始。
2007年：首都圏（千葉県松戸市）に初出店。
2008年1月：民事再生法適用申請。
2008年11月：やまやとの事業譲渡契約締結。
2009年5月：やまやへの吸収分割実施。
2010年1月：楽市株式会社に吸収合併され消滅。楽市株式会社はやまや関西株式会社に商号変更。
* 2017年12月：スピード長尾谷店閉店。「スピード」ブランド消滅。

店舗展開

「スピード」は、京阪神を中心に滋賀県、千葉県、茨城県、神奈川県にも出店していました。多くの店舗で「ダイソー＆スピード」を併設していましたが、大阪府と兵庫県では100円ショップ単独店舗も展開していました。2007年12月31日時点での店舗数は資料によると多数存在したことがわかります。

「スピード」の歴史は、成功と失敗、そして変化の激しい小売業界を生き抜くことの難しさを示す一つの事例として、今後の企業経営を考える上で重要な教訓となるでしょう。

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