スプリングフィールドM1873

スプリングフィールドM1873 トラップドア：アメリカ陸軍初の制式後装ライフル

スプリングフィールドM1873 トラップドアは、アメリカ陸軍が初めて標準装備とした後装式ライフルです。この銃は、単発式で、蝶番式のブリーチブロック（尾栓）が特徴的で、「トラップドア」という名前の由来になっています。歩兵銃型と騎兵銃（カービン）型の2種類のバリエーションがあり、それぞれの用途に応じて使い分けられました。

概要

この銃は、オーリンが設計した「トラップドア」機構の5番目のバージョンにあたります。ブリーチブロックは跳ね上げ式の扉のように開くことから、この名前がつけられました。銃の右側面にあるサイドハンマー（撃鉄）を起こし、ブリーチブロックの横にあるレバーを操作してロックを解除します。ブリーチブロックを開き、手で一発ずつカートリッジ（実包）を薬室に装填します。ブリーチブロックを閉じた後、トリガーを引くとハンマーが倒れ、ブリーチブロック内にあるファイアリング・ピン（撃針）がカートリッジのプライマー（雷管）を叩いて発砲します。使用済みの薬莢は、ブリーチブロックと連動したエキストラクター（抽筒子）によって自動的に排出される仕組みです。

歩兵銃型は銃身長が829mmであるのに対し、カービン型は560mmと短く、前床も銃身の途中までしかない点が異なります。

カートリッジ

M1873で使用されたカートリッジは、「.45-70-405」と名付けられました。これは、.45口径で、70グレイン（約4.5g）の黒色火薬を使い、405グレイン（約26.2g）の弾丸を推進するという意味です。この弾丸は、毎秒約410mの初速を持ち、当時の戦闘戦術においては強力で効果的なものでした。

騎兵隊が使うカービン銃では、反動を抑えるために装薬量を減らした「.45-55-405」カートリッジも製造されました。このカートリッジは、初速が毎秒約340mに減少し、有効射程もいくらか短くなっています。

実戦での問題点と改良

当初、M1873には銅製の薬莢が使われていました。しかし、銅は発砲時に薬室で過度に膨張し、薬莢の抽出を妨げ、銃が詰まるという問題が頻発しました。詰まってしまった場合は、ナイフなどの道具で手作業で薬莢を取り除く必要がありました。カービン型には槊杖が付属していなかったため、詰まってしまうと銃を棍棒として使うしかなかったのです。

1876年6月25日のリトルビッグホーンの戦いでは、ジョージ・アームストロング・カスター中佐率いる大隊がカービンと.45-55弾薬で武装していました。彼らの全滅後、調査の結果、カービンのジャムが要因の一つとして指摘されました。

その後、薬莢は銅よりも膨張しにくい真鍮製に変更されました。この改良は非常に効果的で、真鍮はアメリカ軍のカートリッジの基本素材として現在まで使われています。

リトルビッグホーンの戦訓から、部隊は週に2回の射撃訓練を義務付けられ、その結果、陸軍が新たに設けた射撃技量賞を獲得するほどに上達する兵士も現れました。

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