スペインの警察

スペインの警察・法執行機関

スペインの治安維持を担う警察・法執行機関は、国の安全を守る重要な役割を果たしています。これらの機関は、組織構造や権限において、いくつかの種類に分類できます。

治安機関組織法

スペインの警察組織は、1986年に制定された治安機関組織法（Ley Orgánica 2/1986）に基づいて運営されています。この法律は、憲法第104条の規定を実現するものであり、治安機関の職務、行動指針、法規などを詳細に規定しています。同法では、治安機関を以下の3つに分類しています。

国家治安機関: 国家政府に従属
自治州警察機関: 自治州行政団体に従属
地方自治体警察機関: 地方自治体に従属（市警察など）

国家治安機関

国家治安機関は、スペイン国内全域で職務を遂行する機関であり、以下の2つの総局があります。これらの総局は内務大臣の直下に置かれた国家安全庁長官に従属しています。

1. 国家警察総局（El Cuerpo de la Nacional de Policia）

内務省に従属する文民警察組織です。
主な任務は、犯罪捜査、テロ対策、公共の安全維持などです。
2. 治安警備総局（El Cuerpo de la Guardia Civil）

武装軍警察であり、内務省と国防省の二重の指揮系統下にあります。
治安機関組織法に基づく職務は内務省、軍事的任務は国防省の指示を受けます。
主な任務は、国境警備、麻薬対策、テロ対策、地方の治安維持などです。

地方自治に基づく治安機関

1978年憲法により、スペインには17の自治州が設けられ、自治警察権が認められました。これにより、いくつかの自治州では独自の警察組織が設立されています。

カタルーニャ州（Mozos de Escuadra）
ナバラ州（Foruzaingoa）
バスク州（Ertzaintza）
カナリア諸島（Cuerpo General de la Policía Canaria）

これらの自治州警察は、それぞれの自治州政府の管轄下にあり、地域住民の安全と治安維持に貢献しています。

また、自治州以外の地方公共団体でも、自治体警察が設置されている場合があります。

マドリード（BESCAM）
バルセロナ（GUB）
アラバ県（Miñoiak）

自治州警察官への国家警察官の任命

組織運営上の観点から、国家警察総局の警察官が自治州警察官に任命されるケースがあります。この場合、自治州警察は実務上自治州の管轄下に置かれ、組織上は内務大臣に従属するという形態になります。

まとめ

スペインの警察・法執行機関は、国家、自治州、地方自治体の各レベルで組織され、それぞれの役割と責任を担っています。治安機関組織法に基づいて、これらの機関が連携し、国民の安全と治安を守るために活動しています。

参考文献

赤根芳秀「スペインの警察」『警察学論集』第47巻、第7号、立花書房、53-69頁、1994年7月。

外部リンク

* 外務省 在スペイン日本国大使館

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