自治体警察

自治体警察とは

自治体警察とは、地方自治体が管理・運営する警察組織のことです。警察政策学会では、自治体警察を「国からの指揮命令を受けず、自治体が自らの権限と責任において運営する警察組織」と定義しています。この記事では、自治体警察の代表的な例としてアメリカと日本の制度について詳しく解説します。

アメリカの自治体警察

アメリカは連邦制国家であり、警察制度は自治体警察を基本としています。連邦機関としてFBI（連邦捜査局）やDEA（麻薬取締局）なども存在しますが、警察活動の中心は地方自治体が行っています。アメリカの自治体警察には、以下のような多様な組織があります。

州警察：各州が設置する警察組織。州全体の犯罪捜査や交通取締などを担当します。
郡保安官事務所：郡単位で設置される警察組織。郡内の警察活動や刑務所運営などを担当します。
市町村警察：市町村が設置する警察組織。地域住民の安全を守るための活動を行います。
大学警察：大学構内の治安維持を担当する警察組織。
公園警察：公園内の治安維持を担当する警察組織。
空港警察：空港内の治安維持を担当する警察組織。
鉄道警察：鉄道施設内の治安維持を担当する警察組織。

司法省の調査によると、2008年時点でアメリカには1万7,985の警察組織があり、常勤警察官の数は76万5千人にのぼります。このように、アメリカでは多様な自治体警察がそれぞれの地域で活動しています。

アメリカは連邦制国家であるため、州を独立した国と見なすこともでき、州警察を国家警察として分類する考え方もあります。しかし、日本の警察政策学会では、アメリカ全体の制度を考慮し、州警察も自治体警察の一部として分析しています。

日本の自治体警察

日本の警察制度は、戦後、大きな変遷を遂げてきました。旧警察法（1948年施行）では、国家地方警察と自治体警察の二本立てでした。この時の自治体警察は、市および人口5,000人以上の市街的町村に設置されました。しかし、1954年の警察法改正により、現在の都道府県警察制度に移行しました。

現在の都道府県警察は、広域的な犯罪捜査や交通安全対策など、県全体の警察活動を担っています。都道府県警察も自治体警察と呼ばれることがありますが、警察政策学会では、

都道府県警察は、都道府県公安委員会という地方自治体の機関の管理下にあるものの、国家公安委員会からの指揮命令を受けるため、完全な自治体警察とは言えない

と指摘しています。

また、警察大学校の名誉教授であった土屋正三は、1954年以降の日本の警察制度を「不完全自治体警察」と評し、国家警察と自治体警察の境界が不明瞭になっている点を指摘しました。世界的に見ても、警察組織はそれぞれの国の歴史や社会構造に応じて多様な形態をとっており、国家警察と自治体警察の区別は必ずしも明確ではありません。

まとめ

自治体警察は、地域住民の安全を守る上で重要な役割を担っています。アメリカのように多様な組織が地域に根ざして活動している場合もあれば、日本のように都道府県単位で広域的な活動を行っている場合もあります。警察制度は、その国の歴史や社会構造によって多様な形態をとるため、一概にどちらが良いとは言えませんが、地域住民のニーズに合った警察活動が求められるという点は共通しています。

参考文献

警察政策学会 外国制度研究部会 編『米国の治安と警察活動』2017年。http://asss.jp/report/%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E6%94%BF%E7%AD%96%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%B3%87%E6%96%99096(%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%B2%BB%E5%AE%89%E3%81%A8%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E6%B4%BB%E5%8B%95).pdf。
土屋正三「自治体警察か国家警察か」『警察学論集』第21巻、第8号、立花書房、6-22頁、1968年8月。NDLJP:2670242。

関連項目

国家警察

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