スペイン保護領モロッコ

スペイン保護領モロッコ：歴史、経済、そして現代への影響

スペイン保護領モロッコ（スペイン語: Protectorado español de Marruecos）は、20世紀初頭に存在したスペインの保護国です。この記事では、その成立の背景から、リーフ戦争、スペイン内戦、そして独立後のモロッコへの返還まで、その歴史的変遷を詳細に解説します。

成立の背景

19世紀末、ヨーロッパ列強が植民地獲得に奔走する中、スペインは米西戦争で敗北し、国際的な地位が低下していました。しかし、モロッコは地理的な重要性から、スペインにとって無視できない存在でした。特に、セウタとメリリャの存在は、スペインの戦略的安全保障にとって重要な要素でした。また、モロッコには豊富な鉱物資源が眠っていると考えられており、スペインはモロッコを足がかりに、再び国際社会で存在感を示そうとしました。

形成

1900年、フランスとスペインはモロッコにおける勢力圏を相互に承認しましたが、具体的な境界線は定められませんでした。その後、イギリスとフランスは英仏協商を結び、モロッコにおけるスペインの勢力圏を認めました。1904年には、フランスとスペインが勢力圏を定める条約を締結し、スペインはモロッコ北部の帯状地域と南部のジュビー岬周辺地域を獲得しました。

リーフ戦争

第一次世界大戦後、アブド・エル・クリム率いるリーフ共和国がスペインに対して反乱を起こしました。1921年のアンワールの戦いでは、スペイン軍が多数の兵士を失い、国内で大きな批判を浴びました。1925年、フランスとスペインは共同でリーフ共和国を鎮圧し、戦争は終結しました。

スペイン内戦

1936年、スペイン内戦が勃発すると、スペイン領モロッコに駐留していたアフリカ軍がフランコ将軍の指揮下に入り、反乱軍の中核となりました。フランコはモロッコ軍を動員し、共和国政府と戦いました。内戦終結後、フランコ体制下では、スペイン領モロッコはスペイン本国よりも政治的な自由度が高まりました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦中、スペインはイタリアの侵攻を口実に、国際管理地域であったタンジールを一時的に占領しました。

モロッコへの返還

1956年、フランスがモロッコから撤退すると、スペインも保護領支配を終了し、新たに独立したモロッコ王国に領土を返還しました。しかし、スペインはプラサス・デ・ソベラニア、ジュビー岬、イフニなどの領土を保持しました。その後、モロッコ解放軍がスペインに対して戦争を起こし、1958年のイフニ戦争でモロッコはタルファヤを獲得しました。1969年、スペインはイフニをモロッコに譲渡しました。

経済

スペイン保護領モロッコにおける主要な収入源の一つは、リーフ地方の鉄鉱山でした。これらの鉱山の開発は、メリリャの経済発展に大きく貢献しました。

統治

保護領の統治体制は二重構造になっており、モロッコ政府とスペイン政府がそれぞれ役割を担っていました。モロッコ政府はハリファ（スルタンの代理）が率い、スペイン政府は高等弁務官が率いていました。高等弁務官は保護領における最高権威であり、スペインの政治的行動を指揮しました。

現代への影響

現在、モロッコはセウタとメリリャが自国領であると主張しており、その状態をジブラルタルになぞらえています。一方、スペインはこれらの都市を自国固有の領土と見なしており、両国の間で領土問題が続いています。

スペイン保護領モロッコは、20世紀初頭のスペインとモロッコの関係を象徴する存在であり、その歴史は現代にも影響を与え続けています。

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