英仏協商

英仏協商（Entente Cordiale）

英仏協商は、1904年4月8日にイギリスとフランスが調印した外交文書であり、両国の友好的な関係を象徴するものです。この協商の背景には中世の「百年戦争」から続いていた長い対立を解消するという強い意志がありました。原語の意味は「友好的な相互理解」です。

この協商は、1881年にブルトイユ城で行われたフランスの政治家レオン・ガンベタとイギリスのウェールズ公アルバート・エドワード王子との会見に遡ります。ウェールズ公は1901年にエドワード7世として即位し、両国の対立を解消したいという希望を持っていました。このため、フランスの外相テオフィル・デルカッセとイギリスの外相第5代ランズダウン侯爵ヘンリー・ペティ＝フィッツモーリスとの間で交渉が始まりました。

当時の事態を複雑にしていたのは、イギリスのアフリカ大陸における縦貫政策とフランスの横断政策が交錯した結果、ファショダ事件が生じたことです。この事件は両国の軍事的緊張を高めるものでした。特に、フランスは内部の問題や不祥事によって軍に不信感を抱くようになり、譲歩を余儀なくされました。結果として、イギリスが主導する形が整ったものの、ボーア戦争で苦戦していたイギリス側も安易に対立はできませんでした。

この協約によって、両国の伝統的な政策も変化しました。かつての「栄光ある孤立」政策が放棄され、ロシア帝国の脅威に備えるために日本との日英同盟を締結することとなります。さらに、当時新興国としてイギリスへ絡みつきつつあったアメリカ合衆国やドイツ帝国に立ち向かうため、英仏の接近は加速していきました。

1904年に最終的に調印されたこの協商では、エジプトやモロッコ、さらにはニューファンドランド沖の漁業権といった利権も取り決められました。また、スエズ運河の自由通行権も明記され、両国間の相互に友好的な関係を強化しました。1905年のタンジール事件では、ドイツが現状を変更しようとした際、イギリスがフランスを支援したことが、それによる影響を如実に示しています。

以降、第一次世界大戦にかけてイギリスはフランスを支え続け、英仏協商は重要な外交の基盤となります。広く「三国協商」と呼ばれるイギリス、フランス、ロシア間の関係形成へと繋がります。また、ロンドンとパリ間を結ぶユーロスターの終着駅には、両国の国旗とともに「Entente Cordiale」という文字が掲げられています。

2004年には、英仏協商の調印から100年を迎え、様々な記念行事が催され、その重要性が改めて認識されることとなりました。

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