スペイン王政復古

スペイン王政復古時代（1874年～1931年）

スペインの王政復古時代は、1874年12月29日にマルティネス・カンポスのクーデターによって第一共和政が倒れ、アルフォンソ12世が王位に就いた時から、1931年4月14日に第二共和政が成立するまでの期間を指します。この時代は、スペインが政治的、社会的に大きく揺れ動いた時代でした。

政治的安定の模索

19世紀を通じて政情不安と内戦が続いたスペインでは、王政復古時代に「内閣交代制（turnismo）」と呼ばれる政治慣行が生まれました。これは、自由党と保守党が互いに政権を交代することで、政治的安定を図るというものでした。しかし、このシステムは二大政党以外の勢力を排除し、地方の有力者（カシケ）が選挙結果を左右するなど、多くの問題を抱えていました。共和主義者、社会主義者、無政府主義者、そしてバスクやカタルーニャの民族主義者たちは、この体制に強く反発しました。

アルフォンソ12世の治世とマリア・クリスティナの摂政

マルティネス・カンポスの「プロヌンシアミエント」によってアルフォンソ12世が王位に就き、1876年には憲法が制定されました。この憲法は、スペインを立憲君主制とし、上下両院からなる議会（コルテス・ヘネラレス）を設置しました。国王は元老院議員の任命権、法律の裁可権、軍の最高指揮権を持つとされました。この時代は、経済的な繁栄も見られ、スペイン経済は近代化を進めました。保護貿易政策に支えられ、多くの分野で生産が拡大しました。

アルフォンソ13世の治世と体制の危機

1898年、スペインは米西戦争に敗北し、キューバ、グアム、プエルトリコ、フィリピンといった主要な海外植民地を失いました。この敗北はスペイン社会に大きな衝撃を与え、政府や体制への不信感を高めました。また、モロッコでの軍事作戦の失敗は、国内で大きな不満を引き起こし、バルセロナでは「悲劇の一週間」と呼ばれる暴動が発生しました。これは、徴兵制度への不満が爆発したもので、政府は軍を派遣して鎮圧しましたが、多くの犠牲者が出ました。

プリモ・デ・リベラの独裁政治

社会不安、無政府主義者のテロ、民族主義運動の隆盛は、スペイン社会を大きく揺さぶりました。1923年、ミゲル・プリモ・デ・リベラ将軍がクーデターを起こし、議会制を停止して独裁政治を始めました。アルフォンソ13世は彼を支持し、首相に任命しました。プリモ・デ・リベラは、公共事業への投資を増やしましたが、財政は悪化し、軍の支持も失い、1930年に辞任に追い込まれました。

王政の終焉

プリモ・デ・リベラの辞任後、アルフォンソ13世は以前の体制に戻ろうとしましたが、共和主義を求める声は高まりました。1931年に行われた地方選挙で共和主義・社会主義勢力が勝利し、王政打倒を訴える街頭暴動が起こりました。軍が国王を守らないと宣言したため、アルフォンソ13世はスペインを去り、第二共和政が成立しました。

王政復古時代は、スペインが近代国家として歩む上で、多くの課題と矛盾を抱えた時代でした。政治的安定の模索、海外植民地の喪失、社会不安、そして独裁政治を経て、王政は終焉を迎えました。この時代の経験は、その後のスペインの歴史に大きな影響を与えました。

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