スペイン領サハラ

スペイン領サハラ（スペイン語: Sáhara Español、アラビア語: صحراء الاسبانية）は、1884年12月26日から1975年11月4日までスペインが統治していた西サハラ地域の名称です。スペイン帝国の最後の象徴であり、モロッコとモーリタニア、そして現地の住民が領有権を主張していました。国際連合による植民地化解決への圧力も加わり、スペインは最終的にこの地域を放棄しました。

植民地化の歴史

1884年、スペインはベルリン会議によって西サハラの沿岸地帯を獲得し、交易を開始するとともに軍事的な進出も開始しました。1886年には、ジュリオ・セルベラ・ハビエラ、フェリペ・リッツォ、フランシスコ・キローガらがリオ・デ・オロに入り、地誌学的・天文学的な調査を行いました。これはサハラにおける最初の科学的な調査と考えられています。

20世紀初頭にスペインとフランスの間で条約が締結されるまで、この地域の境界は明確に定められていませんでした。1924年、スペイン領サハラはリオ・デ・オロとサギア・エル・ハムラから構成されるようになり、スペイン領モロッコとは別に統治されました。スペインは1884年にこの地域に入って以来、サハラ人の先住民部族から抵抗を受けました。1904年には、スマラを拠点とするシャイフ・マール・アイナインが強力な反乱を起こしましたが、1910年にフランスによって鎮圧されました。しかし、その後もマール・アイナインの息子や孫、その他の政治指導者による反乱が続きました。

近代史

部族の反乱により、スペインは1934年までに国土の内部を支配することが困難であると認識しました。1956年にモロッコが独立すると、旧植民地であった西サハラの領有権を主張しました。1957年には、モロッコ解放軍がイフニ戦争中にスペイン領西サハラの北にあるシディ・イフニの大部分を占領しました。スペインはカナリア諸島から落下傘兵連隊を派遣し、これを撃退することに成功しました。フランスの援助を受けて支配を再確立し、将来の軍事行動を防ぐための懲罰的行動を実行しました。スペイン領サハラの遊牧民は特定の地域への定住を強制され、都市化が加速しました。また、モロッコへの亡命を余儀なくされた部族もいました。同年、スペインはサギア・エル・ハムラとリオ・デ・オロを統合してスペイン領サハラ県を形成し、タルファヤとタンタンをモロッコに割譲しました。

1960年代に入ると、モロッコはスペイン領サハラに対する主張を続け、返還リストに載せることに成功しました。1961年4月19日、スペイン領サハラはスペインのアフリカの海外県となり、スペインの51番目の県となりました。1969年には、モロッコ内にあるイフニ県を返還しました。

1970年のゼムラ蜂起の弾圧後、サハラ人のナショナリズムが高まり、1973年にポリサリオ戦線が結成されました。ポリサリオ戦線のゲリラ軍は急速に成長し、1975年前半にはスペインは地域の支配権を失いつつありました。スペインは、ポリサリオ戦線の力を削ぐために、サハラウィー国民連合党（PUNS）を結成しましたが、成功を収めることはできませんでした。

スペインは、サハラウィー人の指導者に基づいた政治制度であるDjema'aを設立することで、部族の指導者たちをまとめようとしました。しかし、フランシスコ・フランコの死の直前、スペインはモロッコとモーリタニアからの「緑の行進」に直面し、領土要求運動は最高潮に達しました。スペインは1975年のマドリード協定の後、この地域から軍隊と入植者を引き上げました。モーリタニアはポリサリオ戦線との戦いに敗れた後、1979年8月にティリス・アル・ガルビーヤを放棄しました。1991年に停戦が発効しましたが、モロッコはアルジェリアの支援を受けるポリサリオ戦線との戦いを続けており、現在も統治権は紛争下にあります。

現在の状況

国際連合とPKOはサハラウィー人の間で独立に関する住民投票を実施しようとしていますが、まだ実現していません。アフリカ連合と約81カ国は、ポリサリオ戦線を背景とするサハラ・アラブ民主共和国の下にあるとみなしています。

基礎情報

当時は宗主国であるスペインが存在していたため、西サハラへの旅行は可能でした。治安も現在に比べれば安定しており、ビザを取得すれば比較的容易に渡航できました。渡航の際には種痘予防接種が必要でした。最短ルートは、スペイン本国を経由して航空便で向かうルートでした。

人口

人口は戦後の1950年には1万人程度でしたが、1974年には9万人に増加しました。スペイン放棄後の2010年には50万人を超えたと推定されており、紛争地域でありながらも人口は増加しています。

住民

1972年のデータによると、遊牧民のハム人とアラブ人が55%、スペイン人が27%、その他が18%という民族構成でした。主要言語はスペイン語、アラビア語、ベルベル語などで、宗教はイスラム教とキリスト教（カトリック）が中心でした。

経済

1969年の国民総生産は1300万ドルで、一人当たりの国民所得は210ドルと非常に低い水準でした。輸出はわずかな観光収入程度で、主要な輸出品はありませんでした。輸入額は550万ドルでした。

産業

キビ、ナツメヤシ、家畜、魚が主な産業でした。これらは西サハラで自給的に消費され、輸出余力はほとんどありませんでした。資源としてはリン酸塩と石油が存在します。1963年に西サハラでリン酸塩が発見され、他にも石油などが埋蔵されていると考えられています。しかし、スペインは約2億ドル以上をかけてリン酸塩の採掘・加工・輸送設備の整備を行いましたが、1972年時点では採掘は行われていませんでした。外国資本による試掘も1968年以降行われていません。石油は現在に至るまで少量の生産にとどまっています。

政治

1972年時点では、スペイン議会に海外州として3人の議員を送っており、西サハラの地方議会も存在していました。しかし、行政はスペイン陸軍が行っており、将軍が事実上の元首でした。当時の将軍はフェルナンド・サンチアゴでした。

もう一度検索