スペイン8人組

スペイン8人組（Grupo de los Ocho）

「スペイン8人組」（Grupo de los Ocho）とは、1930年代を中心にスペインの首都マドリードを拠点に活動した作曲家たちの集団を指す名称です。彼らは当時のスペインにおける新しい音楽の方向性を模索し、それまでの音楽潮流からの脱却を図りました。

概要

このグループは、1930年代という激動の時代にスペイン音楽界に現れました。マドリードを主な活動の場とし、合計8名の作曲家で構成されていました。彼らの音楽性は、それまでスペイン音楽の中心であった国民楽派的なスタイルから離れ、より普遍的な表現や形式の探求を目指す新古典主義音楽へと移行する傾向が見られました。この音楽的な方向転換と、新しい芸術を志向する姿勢から、「スペイン8人組」という名称が用いられるようになったと言われています。

名称の由来

「スペイン8人組」という呼び名は、20世紀初頭のフランスで活躍し、反ロマン主義や反印象主義的な音楽を目指した「フランス6人組」（Les Six）に倣って名付けられたものです。これは、形式や明快さを重視し、当時の主流であったスタイルから脱却しようとする彼らの試みが、フランス6人組の活動と精神的に通じるものがあると考えられたためです。名称自体が、当時の国際的な音楽の動向とスペインの作曲家たちの関わりを示す興味深い例と言えるでしょう。

メンバー

スペイン8人組を構成していた作曲家は以下の8名です。

ロドルフォ・アルフテル（Rodolfo Halffter）
エルネスト・アルフテル（Ernesto Halffter）
サルバドール・バカリッセ（Salvador Bacarisse）
フリアン・バウティスタ（Julián Bautista）
グスタボ・ピッタルーガ（Gustavo Pittaluga）
フアン・ホセ・マンテコン（Juan José Mantecón）
ローサ・ガルシア・アスコート（Rosa García Ascot）
フェルナンド・レマーチャ（Fernando Remacha）

これらの作曲家たちは、それぞれ異なる個性を持ちながらも、新しい時代の音楽創造という共通の目的のもとに集いました。

音楽的特徴と活動背景

彼らの音楽における大きな特徴は、国民楽派からの脱却と新古典主義への傾倒です。国民楽派はスペインの民俗音楽や歴史・風景から着想を得た、色彩豊かで情感的な音楽を特徴としましたが、スペイン8人組はこうしたアプローチに加え、J.S.バッハやモーツァルトといった古典派の時代の形式やバランス感覚を再評価し、より普遍的で構築的な音楽語法を取り入れようとしました。これは、当時のヨーロッパ全体で見られた、感情過多なロマン主義からの反動としての新古典主義という潮流と軌を一にするものでした。

1930年代のスペインは、政治的にも文化的にも大きな変化の渦中にありました。このような時代背景の中で、スペイン8人組は、伝統を踏まえつつも新しい芸術的な挑戦を行う場として機能したと考えられます。彼らは互いに刺激し合い、評論活動なども通じて、当時のスペイン音楽界に新しい風を吹き込もうと試みました。

活動の終焉

スペイン8人組としてのまとまった活動は、1930年代後半に突入するとともに困難に直面します。1936年に勃発したスペイン内戦は、彼らの運命を大きく変えました。多くのメンバーが戦乱を避けて国外への亡命を余儀なくされたり、国内での活動が制限されたりしたため、グループとしての実質的な機能は停止し、作曲家たちは散り散りとなりました。これにより、スペイン8人組という一つのまとまりとしての歴史は幕を閉じることとなりました。

まとめ

短い期間ではありましたが、スペイン8人組は1930年代のスペイン音楽において、国民楽派から新古典主義への重要な橋渡しを行い、新しい時代の芸術音楽の可能性を示しました。スペイン内戦によってその活動は中断されてしまいましたが、彼らの残した作品や試みは、その後のスペイン音楽の発展に少なからぬ影響を与えたと言えるでしょう。

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