スペシャル・ライセンス・プレーヤー

スペシャル・ライセンス・プレーヤーとは

スペシャル・ライセンス・プレーヤーとは、1986年に日本サッカー協会（JFA）と日本サッカーリーグ（JSL）によって認定された、実質的なプロサッカー選手を指します。制度としては1年で廃止されましたが、日本のサッカー界がプロ化へと向かう上で重要な役割を果たしました。

制度の概要

この制度の最大の特徴は、実質的なプロ選手を認めた点にあります。それまでJFAはアマチュア規定により、選手登録をアマチュアに限定していました。しかし、読売サッカークラブや日産自動車サッカー部などの一部のチームでは、選手が社業に就かずサッカーを専業とする「契約選手」と呼ばれる形態が非公式に採用されていました。

スペシャル・ライセンス・プレーヤー制度は、こうした実態を追認する形で導入されました。制度上は「スペシャル・ライセンス・プレーヤー」「ノン・プロフェッショナル」「アマチュア」の3つのカテゴリーに分けられ、アマチュア以外は報酬を受け取ってプレーすることが認められました。スペシャル・ライセンス・プレーヤーとノン・プロフェッショナルとの違いは、前者がサッカー以外の広告宣伝活動による報酬を受けることが認められている点のみでした。

導入の背景

JSLは発足当初、純然たるアマチュアリーグとして運営されていましたが、各企業が選手に対する待遇を改善した結果、実質的にはプロと変わらない選手が現れていました。選手は会社に籍を置きながらも、残業手当や試合での勝利に対する賞与など、様々な名目で報酬を得ていました。

また、1985年のワールドカップアジア予選で日本代表が韓国に完敗したことも、プロ化への動きを加速させる要因となりました。こうした状況を受け、JFAは1985年11月の理事会で「ノンアマ選手登録」、翌1986年には「プロ選手登録」の導入についての方針を打ち出しました。

制度の導入

1986年5月、JFAは理事会で「プロ」「ノンアマ」「アマチュア」からなる新たな選手登録制度を承認し、施行しました。この制度で登録を行ったのは、奥寺康彦と木村和司の2人だけでした。奥寺は古河電気工業サッカー部（現：ジェフユナイテッド市原・千葉）に、木村は日産自動車サッカー部に所属していました。

古河は奥寺を破格の年俸で迎え入れ、アジアクラブ選手権1986で優勝を果たしました。また、奥寺はJSLオールスターサッカーでMVPに選出され、JSLの公式ポスターモデルとして出演するなど、日本サッカーのプロ化を象徴する存在となりました。

制度の終焉とその後

スペシャル・ライセンス・プレーヤー制度は1年で廃止され、新たにライセンス・プレーヤーとして72人が登録されました。その後1990年にJFAが選手登録規定を改定し、アマチュアとアマチュア以外の選手（ノン・アマチュア）を経て、1992年のJリーグ発足時にプロフェッショナル契約が導入されるまで存続しました。

「スペシャル・ライセンス・プレーヤー」で用いられた「スペシャル」という言葉は、のちにJFAがプロフェッショナルな制度を導入する際によく用いる言葉になりました。Jリーグの構想段階での名称は「スペシャルリーグ」が用いられ、審判のプロ化の際に用いられた「スペシャルレフェリー」も、この制度に端を発しています。

スペシャル・ライセンス・プレーヤー制度は短命に終わりましたが、日本のサッカー界がプロ化へと向かう上で重要な一歩となりました。この制度を通じて、アマチュア規定の限界が明らかになり、プロ選手の必要性が認識されるようになったのです。

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