スペースX CRS-4

SpaceX CRS-4 (SpX-4)

ミッション概要

SpaceX CRS-4は、アメリカ航空宇宙局（NASA）とスペースXが締結した商業軌道輸送サービス契約に基づき実行された、国際宇宙ステーション（ISS）への重要な補給ミッションです。2014年9月21日に打ち上げられ、「SpX-4」とも呼ばれています。このミッションでは、スペースXが開発した無人宇宙補給機「ドラゴン」が使用され、同機の運用ミッションとしては6機目にあたり、商業軌道輸送サービス契約に基づく運用としては4回目となりました。ISSへの到着は2014年9月23日でした。

打ち上げ

当初、CRS-4ミッションの打ち上げは2014年9月20日に予定されていましたが、悪天候のため延期されました。その後、翌日の2014年9月21日午前1時52分（アメリカ東部夏時間、協定世界時5時52分）に、フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から、スペースXのファルコン9ロケットに搭載されて無事打ち上げられました。

搭載貨物

CRS-4ミッションでは、総重量およそ4,885ポンド（約2.2トン）の貨物がISSへ輸送されました。貨物には、ISSの乗員が必要とする補給品が約1,380ポンド含まれていました。

主要な貨物はNASAとの契約によって内容が定められており、これにはISSの外部に取り付けられる地球観測機器「ISS-RapidScat」が含まれていました。ISS-RapidScatは、海面から反射するマイクロ波を測定することで風速を計算し、天気予報の精度向上に貢献するために設計された装置です。また、ISSから小型衛星を軌道に投入するための展開装置「SSIKLOPS」や、マウスの骨密度や組織の変化を詳細に測定するための生命科学研究装置なども搭載されました。この骨密度計測装置は、二重エネルギーX線吸収測定法を用いており、ISSでの長期的な生命科学研究施設として利用されることを見込んでいました。

一方、二次的な貨物については、スペースXが積荷目録や計画立案において主要な権限を持っていましたが、NASAとの契約により、特定の危険物を排除することなどの制限が設けられていました。また、打ち上げに使用されたファルコン9ロケットの第2段が初期軌道に到達した後、搭載された衛星を目的の軌道へ投入するために必要な安全余地が確保されることも求められていました。

二次貨物の中には、ISSでの無重力環境下での3Dプリント実験装置や、ISSから放出される小型衛星「SPINSAT」、そして生物実験に使用される20匹の実験用マウスが含まれていました。

注目の搭載実験・装置

無重力下3Dプリント実験装置

この装置は、宇宙空間における3Dプリント技術の実用性を検証するために搭載されました。3Dプリントは、熱で溶かした材料を層状に積み重ねて立体構造を作り出す技術です。搭載された装置は、カリフォルニア州のメイド・イン・スペース社によって微小重力環境向けに特別に設計されたもので、地球を離れて部品を製造する初めての装置となりました。ISSでの実験は、将来的な深宇宙有人探査や宇宙での製造活動の基盤となる重要な知見を提供することが期待されており、宇宙でのオンデマンド製造工場を確立するための初期段階と位置づけられています。

SPINSAT

SPINSATは、アメリカ合衆国海軍研究所が開発した直径56cmの球形小型衛星です。大気密度の研究を目的としており、デジタル固体推進（DSSP）社が開発した電気固体推進剤（ESP）スラスタの技術実証機としての側面も持っています。DSSPの技術は、電流を流したときにのみ点火するプラスチック状の推進剤を利用することで、これまで小型衛星では不可能だった精密な軌道制御を可能にします。このSPINSATはDSSP関連技術の初めての宇宙飛行であり、ISSの日本の実験棟「きぼう」に設置されているエアロックを通して宇宙空間に展開されました。衛星に搭載された12基のスラスタは、電流が流れた時だけ固体燃料を燃焼させる特性を持つため、ISSの居住空間内で安全に運用できることがNASAの安全専門家によって確認されました。

宇宙飛行鼠

ISSでの長期にわたる微小重力環境がげっ歯類に与える影響を研究するため、20匹の実験用マウスがCRS-4ミッションでISSに輸送されました。

第1段着陸実験

CRS-4ミッションで使用されたファルコン9ロケットの第1段は、打ち上げ後、アメリカ東海岸沖の大西洋上で大気圏への再突入を試みました。この再突入の様子は、高速での火星大気圏突入の研究の一環として、NASAのWB-57航空機によって撮影されました。ただし、この時の第1段の回収は成功しませんでした。2015年11月には、この第1段の破片と思われる構造物が、英国南西部のシリー諸島沖で発見されています。

CRS-4ミッションは、ISSへの重要な物資輸送だけでなく、革新的な技術実証や生命科学を含む多岐にわたる科学研究を支援し、宇宙開発の将来に向けた重要な貢献を果たしました。

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