スペースX Crew-9

スペースX Crew-9 ミッション詳細

スペースX Crew-9は、NASAの商業乗員輸送プログラムにおける9回目のミッションであり、スペースXのクルードラゴン宇宙船による15回目の有人軌道飛行です。当初の計画から遅延したものの、多くの注目点を持つミッションとなっています。

ミッションの概要

Crew-9ミッションは、当初2024年8月中旬に予定されていましたが、ボーイング社のスターライナー有人飛行試験における技術的な問題により、大幅に遅延しました。NASAは最終的にスターライナーを無人で地球に帰還させ、ボーイング有人飛行試験の宇宙飛行士をCrew-9で帰還させるという決定を下しました。

この遅延に加え、天候要因も重なり、Crew-9は2024年9月28日17時17分21秒（UTC）、現地時間同日13時17分21秒（EDT）に打ち上げられました。

Crew-9ミッションは、クルードラゴン宇宙船にとっていくつかの重要なマイルストーンを達成する予定です。ケープカナベラル宇宙軍施設第40発射施設（SLC-40）からの初の有人ミッションであり、ニック・ヘイグ宇宙飛行士はアメリカ宇宙軍発足後初めて打ち上げられた現役士官となります。また、クルードラゴンとして初めて太平洋に着水してミッションを完了する予定です。

クルーメンバー

当初、このミッションには、NASAの宇宙飛行士ジーナ・カードマン、ニック・ヘイグ、ステファニー・ウィルソンに加え、ロスコスモスの宇宙飛行士アレクサンドル・ゴルブノフが参加する予定でした。カードマンが指揮官、ヘイグが操縦士、ウィルソンとゴルブノフがミッションスペシャリストとして割り当てられていました。

しかし、スターライナーの技術的な問題から、NASAはスターライナーの宇宙飛行士をCrew-9で帰還させることを決定し、Crew-9は2名で打ち上げられることになりました。最終的に、ヘイグとゴルブノフがCrew-9で飛行し、ヘイグが指揮官を務めることになりました。

このクルー交代劇の裏では、NASA内部で指揮官の選定を巡る意見の相違があったと報じられています。新人宇宙飛行士であるカードマンではなく、宇宙飛行経験のあるヘイグを指揮官にすべきという意見が強かったようです。ヘイグは、ソユーズMS-10の打ち上げ中止を経験した数少ない人物の一人でもあります。

ゴルブノフはNASAとロスコスモスの乗員交換協定の一環で参加し、アメリカの宇宙船を操縦する初のロシア人宇宙飛行士となりました。

ミッションの目的

Crew-9は、国際宇宙ステーション（ISS）への9回目のNASA商業乗員輸送計画のフライトであり、ISSでの第72次長期滞在の乗組員を運び、科学研究やISSの維持活動を行います。

打ち上げに使用されたクルードラゴン宇宙船「フリーダム」は、過去にCrew-4やアクシオム・スペースのミッションで使用された実績があります。ファルコン9の第1段ブースターB1085は、今回が2回目の飛行となります。

打ち上げと今後の予定

当初、打ち上げは2024年8月18日に予定されていましたが、スターライナーの状況評価のために延期されました。さらに、エウロパ・クリッパー・ミッションとのスケジュール競合を避けるため、ケープカナベラル宇宙軍施設の第40発射施設（SLC-40）から打ち上げられることになりました。これは、SLC-40から打ち上げられる初の有人ミッションとなります。

アメリカ宇宙軍大佐のヘイグは、宇宙軍創設以来初めて宇宙に打ち上げられた現役軍人となりました。

このミッションは、2025年3月に太平洋への着水で完了する予定です。クルードラゴンとしては初の太平洋着水となり、トランクモジュールの安全な処理に貢献します。

打ち上げの経緯

ヘイグとゴルブノフは、ミッション準備のため9月21日にケネディ宇宙センターに到着し、隔離期間を経て、打ち上げに向けた最終準備を行いました。

ハリケーンの影響で打ち上げは9月28日まで延期されましたが、同日、無事打ち上げに成功しました。ただし、打ち上げ後、ファルコン9ロケットの第2段に異常が発生し、目標外の海域に落下するという事態も発生しました。

スペースXは事故の根本原因を調査するため、ファルコン9ロケットを一時的に地上に留めることを発表しました。

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