スメルディス

スメルディス（古代ギリシャ語: Σμέρδις、ペルシア語: بردیا （Bardiyā バルディヤー）, 生年不詳 - 紀元前525年あるいは紀元前522年）は、アケメネス朝ペルシアの創始者キュロス2世の息子であり、カンビュセス2世の弟にあたります。彼の生涯と事績については謎が多く、王位を巡る複雑な状況が、歴史家や研究者の間で長年にわたり議論の対象となっています。

ヘロドトスの記述

歴史家ヘロドトスの『歴史』によれば、カンビュセス2世は紀元前525年のエジプト遠征に先立ち、夢のお告げによって弟スメルディスが王位を奪うのではないかという疑念を抱き、密かに彼を殺害したとされています。しかし、この秘密裏の行動が裏目に出て、カンビュセス2世がエジプトに滞在している間に、マギ（司祭階級）出身のガウマタがスメルディスに成りすまし、ペルシアの帝位を簒奪したと伝えられています。ヘロドトスは、スメルディスとガウマタが容姿においてよく似ていたと記述しています。その後、スメルディスの娘パルミュスは、ガウマタを倒して王位に就いたダレイオス1世の妻となりました。

近年の研究

しかし、近年の研究では、ヘロドトスの記述とは異なる解釈が有力視されています。ガウマタはスメルディスの偽者ではなく、スメルディス本人であったとする説が浮上しており、この場合、簒奪者はガウマタではなく、彼を倒したダレイオス1世自身であったということになります。つまり、スメルディスは正当な王位継承権を持っていたにもかかわらず、ダレイオス1世によってその地位を奪われた可能性があるのです。

この説が正しいとすれば、ヘロドトスは簒奪者であるダレイオス1世が捏造したプロパガンダの偽史をそのまま後世に伝えてしまったことになります。スメルディスを巡る物語は、古代ペルシアの王位継承における権力闘争の複雑さと、歴史記述の信頼性について再考を促す事例と言えるでしょう。スメルディスの生涯は、史料の解釈によって大きく異なる様相を呈し、歴史の奥深さを物語っています。

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