カンビュセス2世

カンビュセス2世：アケメネス朝ペルシャの拡大と謎の死

カンビュセス2世は、紀元前6世紀に栄えたアケメネス朝ペルシャの第二代王として知られています。父キュロス2世の後を継ぎ、広大な帝国の支配者となりましたが、その治世は短く、謎に包まれた死を遂げたことで知られています。本稿では、カンビュセス2世の生涯、業績、そして彼の死を取り巻く様々な謎について、可能な限り詳細に解説します。

生い立ちと王位継承

カンビュセス2世は、ペルシャ帝国の建国者キュロス2世と王妃カッサンダネの長男として生まれました。幼少期から宗教儀式に携わり、父キュロス2世のバビロン征服後には、マルドゥク神への祈祷文に父王に次ぐ名として刻まれています。この事実は、カンビュセス2世が早くから政治・宗教の中枢に関わっていたことを示唆しています。

キュロス2世は晩年、東方遠征中にカンビュセス2世に王位を譲りました。これは、キュロス2世の死後にカンビュセス2世が単独の王となることを意味しますが、王位継承に関しては、複数の史料からの解釈に違いが見られます。彼の治世は、紀元前529年頃～紀元前522年とされていますが、正確な開始時期は諸説あります。

カンビュセス2世は、異母姉妹であるロクサーナ、アトッサと結婚しました。これは、近親婚が王族において行われていたことを示す、貴重な事例の一つです。

エジプト征服

キュロス2世の死後、カンビュセス2世は、地中海に面した唯一の独立国であったエジプト征服に乗り出しました。エジプト第26王朝のプサムテク3世を破り、エジプトをペルシア帝国に組み込みました。この征服は、カンビュセス2世の軍事力と戦略眼を如実に示すものであり、ペルシア帝国の版図を大きく拡大する契機となりました。征服後、カンビュセス2世はファラオの称号と衣装を着用し、エジプト支配を象徴しました。

征服への試みと挫折

エジプト征服に続き、カンビュセス2世はヌビア王国（現在のスーダン）の征服も試みました。しかし、この遠征は砂漠での困難な行軍によって失敗に終わり、カンビュセス2世の軍隊は深刻な被害を受けました。

さらに、リビアのスィーワ・オアシスへの遠征や、カルタゴへの侵攻計画も失敗に終わりました。これらの失敗は、カンビュセス2世の軍事力や戦略に限界があったことを示唆しているかもしれません。

死と謎

カンビュセス2世は、紀元前522年に死去しました。彼の死因については、複数の説が存在します。ダレイオス1世の記録によれば、カンビュセス2世は、自らの兄弟スメルディス（バルディア）の反乱を鎮圧しようとした際に、事故で死亡したとされています。しかし、ヘロドトスやクテーシアスといった古代の歴史家たちは、彼の死因を事故ではなく、自殺あるいは暗殺として描写しています。この相違は、カンビュセス2世の死の真相に謎を残しています。

また、カンビュセス2世の死後に王位を継いだダレイオス1世が、カンビュセス2世の死に関与していたのではないかという推測も存在します。ダレイオス1世は、スメルディスと名乗る偽王（ガウマタ）を倒して王位に就きましたが、その過程でカンビュセス2世の死を利用した可能性も否定できません。

伝承と評価

カンビュセス2世については、古代ギリシアの歴史家たちによって、様々な伝承が残されています。これらの伝承には、カンビュセス2世の残虐性や暴虐ぶり、そして酒に溺れた生活が描かれています。しかし、これらの伝承は、必ずしも歴史的事実に基づいているとは限らず、後の世代による創作や誇張が含まれている可能性も考慮しなければなりません。

失われた軍隊の伝説

ヘロドトスは、カンビュセス2世がスィーワ・オアシスへの遠征中に、砂嵐によって全滅したという伝説を伝えています。この伝説は、小説や映画などのフィクション作品にも題材として取り上げられています。

まとめ

カンビュセス2世は、アケメネス朝ペルシャの版図を拡大した偉大な王であると同時に、謎多き人物でもあります。彼の死因や治世に関する様々な伝承は、未だに多くの謎を残しており、歴史家の研究対象となっています。彼の生涯は、古代世界の権力闘争や人間の業の深さを垣間見せる、興味深い歴史の一端となっています。

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