スラップファイト

概要

『スラップファイト』は、1986年に発表された縦方向へスクロールするシューティングゲームです。このゲームの開発は東亜プラン、販売はタイトーがそれぞれ手がけました。特に北米市場では、『A.L.C.O.N.』という別タイトルで稼働されています。

東亜プランが開発したシューティングゲームとしては、本作は2番目のタイトルにあたります。当時の基準では複雑とされるパワーアップシステムなどを多数搭載していましたが、難易度は極端に高くなく、比較的誰もが遊びやすいバランスに調整されていました。その一方で、本作に見られるシステム上の複雑さは、後に続く同社の名作『飛翔鮫』（1987年）や『究極タイガー』（1987年）といったタイトルにはあまり継承されませんでした。

後にAmstrad CPC、Atari ST、コモドール64、Thomson TO、ZX Spectrumなど、北米や欧州を中心に様々な家庭用コンピューターに移植されました。日本国内では、テンゲンからメガドライブ用ソフトとして『スラップファイトMD』という名称で発売されるなど、複数の異なる会社から移植版が登場しています。

ゲームシステム

プレイヤーは8方向レバーと2つのボタン（ショット、パワーアップ）を使用して自機を操作します。このゲームに登場する敵キャラクターはすべて地上に配置されており、自機が接触してもミスにならない仕様になっています。

また、東亜プランのシューティングゲームとして初めて、自機の近くにいる砲台が弾を発射しないよう制御される、いわゆる「弾封じ」と呼ばれるシステムが導入されました。この要素は、後の『飛翔鮫』にも受け継がれています。本作においては、弾封じが有効となる自機からの距離は、ゲームの進行ランクが上がるほど狭まるという特徴があります。

パワーアップ

本作のパワーアップシステムは、『グラディウス』（1985年）と同様の選択方式を採用しています。特定の敵機を破壊することで出現する星形のアイテムを獲得すると、画面下部に表示されるパワーアップゲージの一番左の項目が点灯します。さらにアイテムを集めることで、ゲージ上の点灯が右へ一つずつ移動していきます。プレイヤーは、取得したいパワーアップの名前が点灯している状態でパワーアップボタンを押すことで、その能力を得ることができます。一度パワーアップを獲得すると、ゲージの点灯は消滅し、再び一番左の項目からアイテムを集め直す必要があります。

パワーアップゲージには、左から順に以下の項目が並んでいます（メインショット系は相互排他）。現在装備しているメインショットを強化したい場合は、「ウィング」を選択する必要があります。

スピードアップ: 自機の移動速度が向上します。初期状態の自機は非常に移動速度が遅いため、ゲーム序盤で優先的に取得することが攻略の鍵となります。最大5段階まで速度を上げることが可能です。
シールド: 自機が緑色に点滅し、敵の攻撃を最大3回まで防ぐことが可能です。シールドの耐久力は時間経過と共に減少し、その状態は自機の点滅の速さで確認できます。
サイドショット: 自機の左右に短射程の攻撃判定を持つショットを発射します。このサイドショットは他のメインショットと併用が可能で、画面左右からの敵の出現が多い本作では非常に有効な武器となります。
メインショット: ゲージを使って以下のいずれかに変更できます。
ショット: 初期装備の短射程の連射可能なショットです。敵機に密着するほど接近できれば高い威力を発揮します。
ウィング: 自機の左右にオプションパーツが合体し、攻撃力が向上します。最大3段階まで強化できます。ただし、1段階目のウィングは、自機の当たり判定が横方向に拡大するため、被弾しやすくなるリスクがあります。2段階目および3段階目のウィングは、被弾しても自機がミスになることはありませんが、両側のウィングが同時に消滅してしまいます（片側のみ被弾した場合も同様です）。シールドを装備している場合、ウィングを含む自機全体がシールドの対象となるため、当たり判定が大きい状態でシールド効果を得ることになります。
ボム: 自機の前方に強力な爆風を発生させます。高い攻撃力を持つ反面、ショットよりも射程が短く、連続して発射することも難しいため、自機の直前が死角となる点には注意が必要です。
レーザー: ボタンを押し続けることで、自機の前方に長く伸びるレーザーを発射します。単発の威力は他の武器に劣りますが、長い射程を持ち、一部の敵を除いて雑魚敵を貫通するという特性があります。
ホーミングミサイル: 敵を追尾する誘導ミサイルを発射します。画面内に敵が存在しない場合は、16方向へまとめて直線状に発射されるユニークな挙動を示します。攻撃力や連射性能は低いものの、敵を自動で狙ってくれるため、ゲーム内の武器の中でも特に扱いやすい部類に入ります。ただし、状況によっては他の武器の方が有利な場面もあります。

隠しフィーチャー

本作にはいくつかのユニークな隠し要素が存在します。特定の武器（ショット、ボム、レーザー、ホーミングミサイル）で背景グラフィックを攻撃すると、使用した武器の種類に応じて異なる隠しキャラクターが登場します（ショットの場合は、その武器を装備している必要があります）。

また、ショットを使い続けることで現れるヘルパーは、画面内を不規則に動き回りながら自動で攻撃を行いますが、このヘルパーは2P側のプレイヤーが操作できるという非常に珍しい特徴を持っています。このシステムを活用して2人同時プレイを行うと、ゲーム全体の難易度が大幅に下がります。

さらに、ゲーム開始後、最初の自機で敵や地上物を一切攻撃せずにミスをすると、特別な恩恵が得られます。再スタート時にはホーミングミサイルとウィング3段階のパワーアップが付与され、さらにミスしたエリアに応じてボーナス点が加算され、より先のエリアからゲームを再開することができます。具体的な再開エリアとボーナス点は、エリア5以下で1000点とエリア1から、エリア6で15万点とエリア29から、エリア7～11で18万点とエリア32から、エリア12以降で24万点とエリア32から、となっています。

スタート時（ミス後の再開も含む）にレバーを右上に入れたままショットボタンとパワーアップボタンを押しっぱなしにすると、アイテムを1つ取得した状態でゲームを開始できます。これはアイテムを何も持たない状態でミスした場合でも、再スタート直後にスピードアップなどを確実に取得するために有効です。

移植版

『スラップファイト』は、アーケード版の稼働後、様々なプラットフォームに移植されました。特に日本では、テンゲンからメガドライブ版として『スラップファイトMD』が発売されました。このタイトルは、アーケード版をほぼ完全に移植した「オリジナル」モードに加え、ステージ構成やサウンドを一新し、システムの一部改良も施された「スラップファイトMD」モードを収録しており、ほぼ新作と言えるアレンジ版をメインに打ち出した意欲作でした。メガドライブ版の移植開発はエムエヌエムソフトウェア（現在のマインドウェア）が担当し、サウンドは著名な古代祐三氏が手がけています。アーケード版の移植であるオリジナル版では、原作準拠のPSG音源版と新規制作されたFM音源によるアレンジ版の2種類のBGMを選択でき、パワーアップ時の合成音声による名称読み上げ機能も追加されました（ボイス無しも選択可能）。ただし、ネームエントリー時の楽曲は収録されませんでした。

メガドライブ版全体に共通する変更点として、シールドの時間制限がなくなったこと（裏技でアーケード仕様に変更可能）、パワーアップゲージが画面右側に移動し、星アイテム取得でゲージが上から下へ移動するようになったこと、パワーアップ時に装備名称を合成音声で発声する機能（設定でゲージ移動時に発声に変更可）などが挙げられます。『スラップファイトMD』モード固有の変更点としては、ゲーム開始時にウィングを1つ装備していること、ウィングを切り離して敵弾を消す『タイフーンボンバー』が追加されたこと、ショットの射程がパワーアップによって延長されるようになったことなどがあります。

近年では、タイトーから発売された『Let's!TVプレイCLASSIC』シリーズの『タイトーノスタルジア2』に、アーケード版と共に、『タイガーヘリ』の機体でプレイできるアレンジバージョンの『スラップファイトタイガー』が収録されました。

また、セガゲームス（現在のセガ）がリリースした復刻ゲーム機『メガドライブミニ』にも、メガドライブ版が収録されています。このメガドライブミニ版では、オリジナルメーカーとしてテンゲンが紹介されていますが、現在、東亜プランの知的財産権は株式会社TATSUJINが管理しており、同社からの正式なライセンスを受けて収録されています。

さらに、タイトーから発売された『イーグレットツーミニアーケードメモリーズVol.1』にもアーケード版が収録されており、現代でも手軽にプレイすることが可能です。

評価

アーケード版は、1991年に刊行されたゲーメストムック『ザ・ベストゲーム』において、「『グラディウス』の影響を受けつつも、東亜プラン独自の完成度を確立している」と評されました。

メガドライブ版は、ゲーム雑誌『ファミコン通信』のクロスレビューで40点満点中26点、『メガドライブFAN』の読者投票によるゲーム通信簿では30点満点中19.8点という評価を受けています。ゲーム書籍『メガドライブ大全』（2004年）では、「敵の攻撃が厳しすぎず、自機も非常に強力であるため、東亜プランのシューティングゲームを初めてプレイするユーザーにとって最適な選択肢」であり、「家庭用独自のスペシャルモードや古代祐三氏によるBGMも加わり、コストパフォーマンスにも優れた逸品」と高く評価されています。

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