スラユット・チュラーノン

スラユット・チュラーノン：タイの政治家、軍人、そして枢密院議長

スラユット・チュラーノン（Surayud Chulanont、タイ語: สุรยุทธ์ จุลานนท์、1943年8月28日 - ）は、タイ王国の政治家、軍人（陸軍大将）です。現在は、タイの枢密院議長という要職にあります。彼は、タイの第32代首相も務めました。この首相就任は、軍事クーデター後の暫定憲法下であったため、一部の日本のメディアからは「スラユット暫定首相」と報じられました。

生い立ちと軍歴

1965年、スラユットはチュラチョームクラオ陸軍士官学校を卒業し、タイ陸軍に入隊しました。その後、陸軍第2管区司令官など要職を歴任し、1998年から2002年まで陸軍司令官を務めました。軍人としてのキャリアを積む傍ら、1992年と1996年の2期にわたり、勅選議員として上院議員も務めました。2003年に定年退官後、3ヶ月間の出家生活を送った後、枢密院顧問官に就任しました。

首相就任とその後

2006年、スラユットは軍事クーデターを主導した民主改革評議会の推薦により首相に就任しました。彼は、新憲法の起草に取り組み、国民投票を経て憲法が承認された後、新憲法下での総選挙を実施しました。そして、サマック内閣が発足するまで政権を担当しました。2007年4月には、モンクット王ラカバン工科大学の理事長として、東海大学から名誉博士（工学）の学位を授与されました。首相退任後、2008年4月に再び枢密院顧問官に再任され、2019年5月28日から枢密院議長代行、2020年1月2日からは正式に枢密院議長を務めています。

人物像

スラユットの父親であるパヨーム・チュラーノンは、元陸軍中佐で民主派でしたが、後にタイ共産党軍事部門の指導者となりました。スラユットは、父親と袂を分かち、軍に入り、対共産党戦闘の指揮を執る中で昇進しました。父親のパヨームは、後に中国へ亡命しており、スラユットが公務で中国を訪れた際、面会を果たしたと伝えられています。母親は、ボーウォーラデート親王の反乱でボーウォーラデート側で指揮を執ったプラヤー・シーシッティソンクラームの娘です。また、彼の妻であるチトラワディー陸軍大佐も元軍人です。

スラユットは、穏健派の軍人として知られています。陸軍司令官在任中は、政治から距離を置く姿勢を貫き、タクシン派と反タクシン派の対立を静観していました。この姿勢は、反タクシン派からはタクシンの増長を招いたと批判される一方で、タクシン派に対しては甘いという評価も受けています。

彼は、副官として仕えたプレーム・ティンスーラーノン枢密院議長から信頼が厚く、プレームの強い推薦により枢密院顧問官に就任しました。その後、プレームの有力な後継者と目されていましたが、2019年5月26日にプレームが98歳で死去し、その2日後からスラユットが議長代行を務め、2020年1月2日に正式に枢密院議長となりました。

政治的立場と評価

スラユットは、タイの政治的混乱期において、中立的な立場を維持しようと努めてきました。軍人としての経験と、政治への関与を最小限に抑えようとする姿勢は、彼がタイの安定に貢献しようとする意欲の表れと見ることができます。しかし、その穏健な姿勢は、時に両陣営から批判を受けることもありました。それでもなお、彼はタイの政治において重要な役割を果たし続けています。

まとめ

スラユット・チュラーノンは、タイの軍人、政治家として、そして現在の枢密院議長として、タイの歴史において重要な役割を担ってきた人物です。彼の経歴、家族背景、そして政治的な立場を理解することは、現代タイの政治情勢を理解する上で不可欠です。

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