スリラー (アルバム)

アルバム『スリラー』の歴史

『スリラー』（Thriller）は、1982年12月1日にリリースされたマイケル・ジャクソンのスタジオアルバムです。この作品は、現代においても約7000万枚から1億枚の間での売上を記録し、公式には「史上最も売れたアルバム」とされています。

制作背景

ジャクソンは、前作『オフ・ザ・ウォール』と同様にクインシー・ジョーンズをプロデューサーとして迎え、ロサンゼルスのウエストレイク・スタジオでアルバムを制作しました。音楽的には、ポスト・ディスコやクワイエット・ストームのスタイルを基にした新しい要素を取り入れ、ポール・マッカートニーやエディ・ヴァン・ヘイレンといったアーティストの参加により、白人音楽の影響も反映されています。また、音楽専門チャンネルMTVの普及に伴い、アルバムに収録された革新的なミュージックビデオも大きな話題となり、結果として非黒人のアーティストによるミュージックビデオの放映制限を突破する社会現象を引き起こしました。

キング・オブ・ポップの誕生

1983年1月には、シングル「ビリー・ジーン」が発表され、ジャクソン自身が作詞・作曲を手掛けたこの曲は、ストーカー被害を受ける自身を反映していると言われています。曲の暗いテーマを映像で表現したミュージックビデオは当時としては斬新で、MTVで放映されるやいなや注目を浴びました。特に、CBSからの圧力により放映が実現し、これが後のミュージックビデオブームの火付け役となりました。さらに、1983年5月にはモータウン25周年コンサートで「ビリー・ジーン」を演奏し、そこで初披露したムーンウォークが話題を呼びました。

次いでリリースされたシングル「ビート・イット」は、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターによる力強いロックナンバーで、ジャクソンが本物のギャングたちとダンスするミュージックビデオは『ウエスト・サイド・ストーリー』に触発されたスタイルで、大きな反響を呼びました。

そして1983年12月には、約14分にわたるミュージックビデオ「スリラー」が公開され、特撮や驚きの演出に満ちたその内容が観衆を魅了しました。このビデオは後に大量のパロディを生み出し、1999年にはMTVの「最も偉大なビデオ100」に選ばれました。

商業的成功

『スリラー』は、全米ビルボードチャートで37週間連続1位を記録し、他の7カ国でも1位を達成しました。日本では1984年2月13日付で、オリコン洋楽アルバムチャートで12週連続1位を獲得し、ミリオンセラーとなりました。

アルバムからは全9曲のうち7曲がシングルとしてリリースされ、すべてが全米トップ10に入るという快挙を成し遂げました。2012年にはギネス世界記録で7000万枚の売上が認定され、2020年にはアメリカでの売上が3000万枚を突破するなど、現在もその記録は更新されています。

受賞歴と評価

『スリラー』は1984年の第26回グラミー賞で、最優秀レコードや最優秀アルバムを含む8部門で受賞し、ジャクソンの音楽家としての地位を確立しました。ローリング・ストーン誌による評価でも、「ビート・イット」や「ビリー・ジーン」が名曲として取り上げられ、多くのアーティストに影響を与え続けています。

特別盤

2008年には25周年記念盤、2022年には40周年記念盤が発売され、新たなトラックや映像が追加されて注目されています。これにより『スリラー』は新たな世代にも感動を与え、音楽史に残る作品として今後も語り継がれていくことでしょう。

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