スレンドラ・ビクラム・シャハ

スレンドラ・ビクラム・シャハ

スレンドラ・ビクラム・シャハ（Surendra Bikram Shah、1829年10月20日 - 1881年5月17日）は、ネパール王国の第6代君主です。彼は第5代国王ラジェンドラ・ビクラム・シャハの息子として生まれ、1847年から1881年まで在位しました。その治世は、ネパールにおけるラナ家による専制政治の始まりと深く結びついています。

生涯

スレンドラは1829年10月20日、当時のネパール国王ラジェンドラ・ビクラム・シャハの子として生を受けました。しかし、若い頃から彼の素行は芳しくなく、王室や国家にさまざまな問題を引き起こしました。この状況は看過できないレベルに達し、1842年には国の重臣、市民、そして軍の代表者が一堂に会し、父である国王ラジェンドラに対し、息子スレンドラの統治権を停止するよう求める事態に発展しました。

予期せぬ要求に困惑した父王ラジェンドラは、政治的な混乱を収拾するため、第二正妃であるラージャ・ラクシュミー・デビーに国家の全権を委譲するという異例の措置を取りました。この決定は、王宮内部での複雑な権力闘争を招き、数年間にわたる不安定な政治状況が続くこととなりました。

状況が大きく動いたのは1847年です。当時の宰相であったジャンガ・バハドゥル・クンワル（後にジャンガ・バハドゥル・ラナと改名）は、父王ラジェンドラと王妃をネパールから追放し、インドへと送りました。この政変を受けて、スレンドラは形式的にネパール王国の王位を継承し、第6代君主として即位しました。

しかし、彼の即位は、ジャンガ・バハドゥル・ラナによるネパールの実権掌握を意味するものでした。即位したスレンドラは、国王としての権限や実権を完全に奪われ、以降の生涯をジャンガ・バハドゥル・ラナ、そしてラナ家による強固な支配下における名目上の存在として過ごすことになります。彼は自らの意思で政治を動かすことはできず、いわばラナ家の「傀儡」としての役割を担いました。

スレンドラの息子であるトライローキャ・ビクラム・シャハ王子は、ラナ家との関係を強化するため、ジャンガ・バハドゥル・ラナの二人の娘と結婚しました。しかし、トライローキャ王子は現状を打破し、王権を回復しようという志を持っていました。彼は弟のナレンドラ王子や、ラナ家の支配に反対する勢力と連携し、王権を取り戻すための計画を進めていたとされています。しかし、その計画が実行に移される前に、トライローキャ王子は1878年に急死してしまいます。彼の死により、王権回復の試みは頓挫しました。

1881年5月17日、スレンドラ・ビクラム・シャハは崩御しました。彼の死後、王位は急死した息子トライローキャの息子、すなわちスレンドラの孫にあたるプリトビ・ビール・ビクラム・シャハが継承しました。スレンドラ王の治世は、ネパールが実質的にラナ家によって統治された時代の始まりを示すものであり、国王が象徴的な存在へと追いやられた歴史的な転換点として位置づけられます。

関連項目

ネパール王国
ゴルカ朝
ラジェンドラ・ビクラム・シャハ
ジャンガ・バハドゥル・ラナ

もう一度検索