ネパール王国

ネパール王国

ネパール王国（ネパール語: नेपाल अधिराज्य、英語: Kingdom of Nepal）は、1768年12月21日の成立から2008年5月28日の廃止まで、ネパールの君主制時代全般を指す呼称です。その源流はゴルカ王国にあります。

歴史

ネパール統一以前、現在のネパールにあたる地域は数多くの小国家に分かれていました。特にカトマンズ盆地では、マッラ朝がバクタプル、カトマンズ、パタンの三王国に分裂し、覇を競っていました。16世紀には、ゴルカ王国がヤショー・ブラフマ・シャハの子であるドラヴィヤ・シャハによって確立されますが、当初は二四諸国にも数えられないほど小さな勢力でした。

1743年、ゴルカ王位を継承したプリトビ・ナラヤン・シャハは、分裂状態にあったネパール全土の統一事業に着手します。彼は戦略的な軍事行動を展開し、特にカトマンズ盆地のマッラ朝諸国を次々と攻略。1768年についにカトマンズを制圧し、ネパール全土を統一してシャハ朝ネパール王国を成立させました。その後も領土拡大は続き、ブータンやシッキムと国境を接するに至ります。

しかし、統一された王国は新たな困難に直面します。18世紀末にはチベットとの貿易摩擦から清朝の介入を招き、1788年から1792年にかけて清・ネパール戦争が発生。カトマンズ近郊まで攻め込まれたネパールは清朝の朝貢国となり、1912年の清朝滅亡まで定期的な朝貢使節派遣を余儀なくされました。

また、南からはイギリス東インド会社の勢力が迫ります。1814年に勃発したグルカ戦争に敗れたネパールは、1816年のスガウリ条約によって国土の約3分の1を割譲しました。これによりネパールは事実上イギリスの保護下に置かれますが、王政自体は維持されました。

1846年、宰相ジャンガ・バハドゥル・ラナが宮廷クーデターを起こし、ラナ家による専制体制が確立されます。これにより、シャハ王家は名目上の存在となり、実権はラナ宰相家が握ることとなりました。このラナ家支配は100年以上続きましたが、1923年にはイギリスとの友好条約締結により、保護国から独立国としての地位を確立しました。

第二次世界大戦後、アジア各地で独立運動が高まる中、ネパールでもラナ家支配に対する反発が強まります。1951年、トリブバン国王が亡命先から帰国し、国民会議派などの協力も得てラナ家体制を打倒。王政復古を達成し、立憲君主制が導入されました。

1959年にはマヘンドラ国王の下で初の総選挙が実施され、ネパール会議派政権が誕生しますが、国王と政府の対立が深まり、1960年に国王がクーデターを起こして議会と内閣を解散。政党活動を禁止し、国王主導のパンチャーヤト制と呼ばれる間接民主制が導入されました。

1990年、全国的な民主化運動（ジャナ・アンドラン）の高まりを受け、ビレンドラ国王は譲歩し、複数政党制と議会制民主主義を柱とする新しい憲法を制定。これにより、立憲君主制の下での議会政治が復活しました。ビレンドラ国王は国民からの信頼を集めましたが、2001年に発生した王族殺害事件で国王を含む多くの王族が犠牲となります。事件後、叔父にあたるギャネンドラが王位に就きました。

ギャネンドラ国王は徐々に専制色を強め、2005年には政府の実権を掌握しますが、これに対する大規模な民主化運動（ロクタントラ・アンドラン）が再び発生。2006年、国王は民衆の要求に屈し、主権は国民にあることが確認され、王制の存廃は制憲議会に委ねられることが決定しました。

そして2008年5月28日、制憲議会の開催により、ネパール王国は正式に廃止され、ネパール連邦民主共和国が樹立されました。これにより、239年に及ぶネパールの君主制の歴史に幕が下ろされました。

国歌は「Shreeman Gambhir (राष्ट्रिय गान्)」（英語: "May Glory Crown You, Courageous Sovereign"）でした。

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