スワイヤー・グループ

スワイヤー・グループ：多角的な事業展開でアジアを牽引する国際企業

スワイヤー・グループは、香港に本部を置く国際的な複合企業です。その歴史は19世紀初頭にまで遡り、海運業から始まり、現在では航空、不動産、貿易、製造など幅広い分野で事業を展開しています。特にアジア地域における存在感は大きく、有数の財閥企業として知られています。中華圏では「太古（Taikoo）」の名称で広く認知されています。

歴史：清朝時代から続く深い繋がり

スワイヤー・グループのルーツは、19世紀の清朝時代にまで遡ります。当時、イギリスの植民地であった香港を中心に、スワイヤー家はイギリス資本と密接な関係を築き、中国の近代化に深く関わりました。特に上海租界では、欧米商人の支配的な立場にあり、中国近代史の舞台にもしばしば登場しました。

1860年代からは、イギリスの有力海運会社であるアルフレッド・ホルト社（通称：ブルー・ファンネル・ライン）のアジア代理店として活動。その後、自社でチャイナ・ナビゲーション社（CNCo）を設立し、長江での客船運航を皮切りに、東アジア・オセアニアでの海運事業で成功を収めました。香港には太古船渠を建設し、船舶整備や造船事業も展開しました。

第二次世界大戦では大きな損害を受けたものの、航空事業への参入など新たな分野を開拓し、グループ全体の発展を遂げました。

年表：変革と成長の軌跡

1816年：ジョン・スワイヤーがイギリス・リバプールでスワイヤ商会（John Swire & Sons Limited）を創業。
1861年：スワイヤー商会がオーギュスティン・ハード社を代理店とし、中国でのビジネスを開始。
1864年：ロンドン支店を開業。
1866年：R. S. バターフィールドとの共同経営を開始し、上海租界に「バターフィールド＆スワイヤー社（Butterfield & Swire（B&S））」を設立。
1867年：横浜支店を開業。
1870年：香港支店を開業。
1881年：太古砂糖（Tai-koo Sugar Ltd.）を開業。
1948年：キャセイ・パシフィック航空の資本の45%を取得。
1953年：中華人民共和国の成立に伴い、中国国内の支店を閉鎖。
1974年：香港での企業名をB&S社から香港スワイヤー商事（John Swire & Sons (HK) Ltd.）に改名。

多岐にわたる事業展開

スワイヤー・グループの中核企業は、香港証券取引所に上場している「スワイヤー・パシフィック社（Swire Pacific Limited）」です。

主なグループ企業は以下の通りです。

スワイヤーパシフィック・オフショア・ホールディングス（Swire Pacific Offshore Holdings Limited）：シンガポールを拠点とする海運船舶関連企業。石油・天然ガス資源開発用船舶で高い評価を得ています。
スワイヤー不動産（Swire Properties Limited）：香港を代表する不動産会社の一つ。上海のCITIC Squareにも資本参加しています。
チャイナ・ナビゲーション・カンパニー（China Navigation Company）：コンテナ船などの海運業を手掛けています。
太古城中心（Cityplaza）：香港最大のショッピングモール兼オフィスコンプレックス。
太古坊（Taikoo Place）：香港の主要なオフィスコンプレックス。
パシフィック・プレイス（Pacific Place）：香港のショッピングモール兼オフィスコンプレックス。
キャセイパシフィック航空（国泰航空）：香港を代表する航空会社。
太古飲料（Swire Beverages Limited）：コカ・コーラ社との共同出資による飲料水メーカー。アメリカにもボトリング会社を所有しています。
ICIスワイヤー・ペイント（ICI Swire Paints）：塗料メーカー。
太古自動車（Taikoo Motors Offshore Limited）：台湾でのボルボなどの商用車販売会社。その他、フェラーリ、マセラティ、アウディ、フォルクスワーゲン、起亜などのディーラーも展開しています。
香港リーボック（Reebok Hong Kong Limited）：香港およびマカオでのリーボック製品販売会社。
スワイヤ不動産（Swire Real Estate Co. Ltd）：日本での不動産会社。
* 華膳空廚（China Pacific Catering Services Ltd）：チャイナエアラインと共同出資の機内食製造会社。

スワイヤー家：歴史を支える一族

スワイヤー家は、香港上海銀行の個人筆頭株主としても知られています。現在のグループ総裁は、創業者の玄孫にあたるバーナビー・ニコラス・スワイヤーが務めており、一族による経営が続いています。

ゆかりの地：歴史を語る場所

東京には、かつてイギリス大使館裏に「スワイヤーハウス」がありましたが、現在は存在しません。横浜には、バターフィールド＆スワイヤー社が所有していた「イギリス七番館」が現存し、現在は創価学会の戸田平和記念館となっています。神戸の北野町には、かつてバターフィールド＆スワイヤー社の社宅があり、「バターフィールドの三本松」として知られていました。

フィクションへの登場

ジェームズ・クラベルの小説「Noble House」では、1963年の香港を舞台に、スワイヤー・グループとそのライバル企業「ジャーディン・マセソン社」との確執が描かれています（ただし、社名は変えられています）。

スワイヤー・グループは、その長い歴史の中で、時代の変化に対応しながら多角的な事業展開を続け、アジア経済の発展に大きく貢献してきました。今後も、そのグローバルなネットワークと豊富な経験を活かし、さらなる成長を遂げることが期待されます。

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