スワロー・サイドカー・SS2

ジャガーの礎を築いた名車：SS2の誕生と進化

ジャガーという名を知らしめるきっかけとなったモデルの一つに、SS2があります。SSカーズ（後のジャガー）が1931年10月、ロンドンモーターショーで発表したこの車は、それまでサイドカーの製造を主としていた同社にとって初のオリジナルモデルであり、SS1と共に自動車メーカーとしての歴史の幕開けを告げる重要な存在でした。

SSという名称の由来については、諸説あります。「スワロー・サイドカー」や「スワロー・スペシャル」、「スタンダード・スワロー」など、様々な説が飛び交っていますが、確かなことは、このモデルが同社の歴史において非常に重要な位置付けにあったということです。

SS2の心臓部には、スタンダード社製直列4気筒エンジンを搭載。初期モデルは排気量1,004cc、サイドバルブ式で、スタンダード製3速マニュアルトランスミッションと組み合わされていました。このエンジンは、スタンダード・リトルナインに搭載されていたものと同一のものでした。興味深いのは、シャシです。スタンダード・モーター・カンパニー製の専用シャシが用いられており、スタンダード社の社長ジョン・ブラック氏の協力を得て、オリジナルよりも低い設計を採用していました。ホイールベースは2,270mm。ボディは当初2人乗りクーペのみで、全長3,660mm、全幅1,370mm、全高1,370mmという、当時としては非常に低い車高が特徴でした。最高速度は96km/hに達し、ベントレーを思わせる洗練されたデザインと、その価格の安さから、高い人気を得ました。

発売後間もなく、トランスミッションは4速マニュアルとなり、エンジン排気量も1,052ccへと拡大されました。更なる進化は1933年10月、ベース車両が一クラス上の10HP/12HPに変更されたことに見られます。これにより、全長4,170mm、全幅1,420mm、全高1,370mm、ホイールベース2,640mmとサイズアップし、4人乗りモデルが登場しました。エンジンも、1,343cc(32hp/4,000rpm)と1,608cc(32hp/4,000rpm)の2種類から選択できるようになり、ボディタイプもツアラーと2ドアセダンが追加されました。セダン仕様の車両重量は1,028kgに達しました。

ステアリングはカム・アンド・レバー式、サスペンションは半楕円リーフスプリング、ブレーキは前後ともドラム式と、当時の一般的な機構が採用されていました。それでも、その美しいデザインと高い走行性能、そして手頃な価格は、多くの人々を魅了し、SSカーズは1933年半ばまでにイギリス国内に100以上のディーラー網を構築するまでになりました。SS2は、単なる自動車というだけでなく、ジャガーというブランドの礎を築いた重要なモデルであると言えるでしょう。その後のジャガーの発展に大きな影響を与えた、歴史的にも重要な一台と言えるでしょう。

参考文献：『ワールド・カー・ガイド12ジャガー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-105-6

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