スーセントマリー (オンタリオ州)

スー・セント・マリー

カナダのオンタリオ州北部に位置する都市、スー・セント・マリー（Sault Ste. Marie）は、米国との国境を流れるセント・マリー川の北岸に広がっています。川の対岸、アメリカ合衆国ミシガン州にも同名の都市が存在し、両市はインターナショナル・ブリッジで結ばれた双子都市となっています。2021年のデータによると、その人口は約7万2051人で、オンタリオ州北部においては、サドバリーやサンダーベイに続く3番目の規模を誇ります。しばしば親しみを込めて「ザ・スー」（the Sault, the Soo）と呼ばれています。オンタリオ州北部の多くの地域と同様に、1990年代初頭から人口は減少傾向にあり、かつての約8万4000人から減少しています。

都市名の由来

この都市の名称は、フランス語で「セント・マリーの急流」を意味する「Saults de Sainte-Marie」に由来しています。フランス語の「sault」は、現代の「saut」（ジャンプ、跳躍）の古形であり、1600年代には滝や急流を指す用法も存在していました。この語源はスペイン語の「salto」（急流）とも同系です。現代のフランス語では、急流を指す言葉としては「chutes」や「rapides」が一般的であり、「sault」は17世紀に命名された地名などにその名残が見られます。

歴史的背景

この地域は古来より、先住民オジブワ族によって「Baawitigong」（急流の場所）と呼ばれ、セント・マリー川で獲れる白身魚の漁期にはオジブワ族の重要な拠点となっていました。ヨーロッパ人で最初にこの地を訪れたのは1623年のフランス人であり、彼らは当時のフランス王ルイ13世の弟、オルレアン公爵ガストンに敬意を表し、「スー・デ・ガストン」（Sault de Gaston）と名付けました。その後、1668年にはイエズス会のフランス人宣教師たちが「スー・セント・マリー」と改称し、現在のミシガン州側に当たる川の南岸に恒久的な入植地を築きました。町政が敷かれたのは1887年、市制に移行したのは1912年のことです。

第二次世界大戦中の1941年、真珠湾攻撃を契機に、船舶の重要な航路であるスー・セント・マリーの運河（閘門）の防衛に対する懸念が高まりました。ドイツからの北部経由での攻撃を想定し、相当数の駐屯部隊が組織されました。ノルウェーから空路で都市までの距離がニューヨークまでと同等であることから、長距離爆撃機の発達により、突如として空からの攻撃を受ける可能性が恐れられました。この危機感は、カナダとアメリカ両国の防衛戦略を北極圏へと向けさせる契機となりました。

この状況を受け、カナダとアメリカは「防衛上の永続的な合同委員会（Permanent Joint Board on Defence）」を設置し、運河を守るため、米国空軍とカナダ空軍による重要な対空防衛拠点を構築することを決定しました。対空防衛の訓練施設がスー・セント・マリーの北約100km、スペリオル湖沿いに建設され、阻塞気球の配備や、航空機の接近を早期に探知するためのレーダーがオンタリオ州北部に5箇所設置されるなど、大規模な防衛体制が敷かれました。しかし、数年後の1943年には、これらの多くの防衛施設は過剰と判断され撤去が進められ、防衛拠点としての位置づけは縮小されました。

経済活動

スー・セント・マリーの経済は、長らく製鉄業が中心でした。市内最大の単独雇用主であるアルゴマ製鋼（Algoma Steel）は、都市経済の柱となっています。アルゴマ製鋼をはじめとする精錬会社や、クロム鉱山の存在は、軍事および輸送関連製品の生産において歴史的に重要な役割を果たしました。特に1940年代の戦時中、製鉄とクロムの生産はカナダとアメリカにとって戦略的に非常に重要でした。1960年代初頭から1970年代にかけて、スー・セント・マリーは製鉄業の隆盛とともに大きく発展しました。しかし、その後の製鉄需要の低下に伴い業界は縮小し、アルゴマ製鋼も経営難に陥り、大規模な人員削減を余儀なくされました。近年、同社はオンタリオ州政府との合意のもと、無利子ローンの返済問題を決着させ、2004年には再び利益を出すまでに回復しました。

林業もまた、この都市にとって重要な産業です。セント・マリー製紙（St. Mary's Paper）はこの分野の主要企業でした。近年、アウトソーシング業務としてのコールセンターが新たな主要産業として台頭しており、市内の5つのコールセンターを合わせた雇用数は、都市全体の最大の雇用体となっています。その他、オンタリオ・ロッテリー・ゲーミング・コーポレーション（OLG）も大きな雇用主であり、コールセンターとアルゴマ製鋼に次ぐ3番目の規模となっています。

交通と観光

交通網としては、スー・セント・マリー空港（IATAコード: YAM）があり、空路でのアクセスを提供しています。市内交通は、スー・セント・マリー・トランジットが担っています。鉄道では、アルゴマ・セントラル鉄道がスー・セント・マリーとハーストを結んでおり、特に風光明媚なアガワ渓谷を走る観光列車としても知られています。

観光面では、飛行機と森林保護の歴史を紹介するブッシュプレイン・ヘリテージ・センターや、国定史跡に指定されているスーセントマリー運河が主要な見どころです。前述のアルゴマ・セントラル鉄道によるアガワ渓谷への観光ツアーも人気です。他にも、カジノ・スーセントマリー、アルゴマ美術館などがあります。周辺には、パンケーキ湾州立公園、スペリオル湖州立公園、バッチャワナ湾州立公園といった自然豊かな州立公園が点在し、アウトドア愛好家にとって魅力的なエリアとなっています。

人口構成と文化

スー・セント・マリーの人口構成は、イギリス系とフランス系が多数を占めますが、イタリア系の大きなコミュニティも存在します。先住民の人口も少なくなく、都市の近くには3つの先住民居住区があります。より良い雇用機会を求めてオンタリオ州南部の大都市へ移住する人が多いため、都市の人口は減少傾向にありますが、それでも14歳以下の若い世代の人口は65歳以上の高齢者人口を上回っています。

詳細な統計では、人口の91.6%がイタリア系、フランス系、イギリス系、スカンジナビア系、南ヨーロッパ系などを含むヨーロッパをルーツとする人々です。先住民は約7.8%を占め、その他は中国系、アジア系、アフリカ系、フィリピン系などの人々で構成されています。宗教では、キリスト教徒が圧倒的に多く人口の85.9%を占め、その中でもロマン・カトリックが最も大きな信仰グループです。

教育、行政、スポーツ

教育機関としては、スー・カレッジとアルゴマ大学（かつてのアルゴマ・ユニバーシティ・カレッジ）があります。行政面では、アルゴマ地区の行政府が置かれており、地域の行政中心地としての機能も担っています。スポーツ施設としては、ジョン・ローズ・センター内にスケートボード用のスケートパーク（Superior Community Skatepark Association運営）が整備されています。

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